02

夢主視点


 今日も今日とて学校に登校して、いつものように授業を受けて、それから帰宅する為にいつものランニングシューズを履いて校門を走り過ぎたら、なぜか私は立派な日本家屋の前にいた。
 私たちの住む家も古風な日本家屋だし、広い家だけど、こんなに立派な風貌はしてない。だから首を傾げて、さてここはどこだろうと見回したら何やら金髪の男の子が歩いてたから声をかけた。そしたら男の子は驚いた顔をして、何故かついて来いと言って私を屋敷へと連れて行った。
 何やら男の子やら男性やらとすれ違い、不審な目を向けられながら金髪の男の子について歩いていたら部屋に通された。シンプルな畳の部屋には何だか古風な机やらなんやら。そんな部屋の机には紙が広げられていて、その紙と向き合っていた女性が顔を上げて私を見た。その人も驚いた顔をして、それから頭をぐしゃりと掻いた。
「えっと、獅子王。その子は誰かな。」
「なんか門の前にいたから連れてきた。」
「それって門の外だったりする?」
「それが門の内側だったんだよ、これが。」
「マジで。うわー、まじか。え、何で? 侵入者ってワケじゃなさそうだし、その前に現代の制服着てるし、明らかにまだ未成年だし……。」
 誘拐事件とか神隠し事件とかぶつぶつ言う女性に、獅子王と呼ばれた男の子が落ち着けよとなだめていた。どうやら仲良しなんだなと思ってたら、女性がまた顔を上げた。
「うーん、どうやら守護がかかってるみたいね。自己紹介してくれる?」
「えっと、太星ヒカル。15歳の中学三年生です。」
「概ね予想通りだね。現状はどれぐらい理解してる?」
「学校の校門通ったら日本屋敷の前に居ました。」
「それはまた、変なルートで来たって言えばいいのかな。正規ルートなんて知らないけど。」
「え、正規ルートっていつもの門の時空ゲートじゃねえの。」
「あ、そうだね。さすがは獅子王。じじいだ。」
「じじいは関係ないだろ。」
 やっぱり仲良しなんだなと思ってたら、女性がこほんとわざとらしく咳をして私に向き直った。
「おそらく、ゲートのエラーもしくは何らかの手違いでこの本丸に迷い込んだと予想できるわ。ヒカルちゃんのいた時代、つまり年月日を教えて欲しいのだけれど。」
「それなら××××年×月×日です。時間と分と何秒かもいりますか?」
 え、と言葉を詰まらせた女性は少ししてから頷いたので細かく伝える。そしたら女性が何やらパソコンを操作し始めたので、辺りをぐるっと見回してから獅子王と呼ばれた男の子を見た。男の子は私に気が付いて安心するようにと言った。
「主なら帰せると思うぜ。」
「はあ。」
 沈黙。しばらく女性がパソコンを操作するのを見ていたら、彼女は深いため息を吐いて頭を抱えた。男の子がどうしたと声をかけると、女性はこちらを向いた。
「ごめんねヒカルちゃん。検索に引っかからなかったからちょっと政府に問い合わせることにしたの。でね、多分返事は遅くなる。だからしばらくこの本丸で待機していてほしいのだけど。」
「しばらくですか。まあ、多分大丈夫です。少し授業を休んでも勉強は得意な妹に頼み込んで教えてもらえれば補えるので。」
「ありがとう。それじゃあ獅子王、ヒカルちゃんの案内をお願い。」
 女性の言葉に男の子は待ったをかけて、呆れたようにまだ自己紹介や説明をしていないと言った。その言葉で女性も気が付いて、簡単な自己紹介をしてくれた。女性は審神者、この屋敷の主。男の子は獅子王と言って、刀剣男士なのだと。
「刀剣男士って何ですか?」
「刀に宿った付喪神、らしいよ。それを刀剣男士として顕現してもらって、敵と戦っていただくの。」
「敵ですか。」
「うん。まあ、ざっくり言うと戦争してるみたいなモンだね。」
「物騒ですね。」
「そうなんだよね。」
 本丸は安全だけどねと笑った審神者さんに、あの中学校は流石に戦争レベルの事はしてなかった筈と考えていたら、獅子王さんが呆れていた。多分説明がざっくり過ぎたのだろう。それなら当の本人が納得できないことに納得できる。
 さてまずは最低限でいいから本丸の案内をと審神者さんを言ったけれど、獅子王さんは刀に周知させる場を設けたいと言った。多分、さっき歩いた時に不審な目で見られていたのが原因だろう。敵と戦うそうだから、敵と疑われていたのかもしれない。審神者さんは獅子王さんの意見に賛成して、私もそれに同意したのだった。

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