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獅子王視点


 その日は何故だか晴天の日だった。
 昨日まで曇りや雨が続いていたこの本丸に晴天の日は久しぶりだった。短刀たちははしゃいで裏山へ遊びに行き、出陣部隊や遠征部隊は幸先が良いと喜んだ。内番をする刀たちは仕事がしやすいと安堵し、特に仕事がない刀は街へと遊びに出かけた。結果、本丸には刀が少なかった。俺は本丸に残った方で、ふらふらと本丸の中、特に屋敷周りを散歩することにした。
 急に晴れるということも無いわけじゃないだろう。そんな話を長谷部とすれ違った際の軽い世間話として行い、俺は日向ぼっこする鵺を見てから、まあこんな日もあっていいなと言っておいた。きっと不自然ではなかったのだろう。長谷部は不審がる事無く仕事へと戻って行った。

 そう、実のところ俺はこの晴天が手放しに喜べるものとは思えなかった。降り注ぐ日差しに何やらざわざわと心が落ち着かず、いわゆる胸騒ぎが脳みそまで支配していた。だからこそ散歩と称して本丸の警備のようなことをしているのだ。

 何も無ければ、それほど嬉しい事はないだろう。そんな事を考えながら歩いていると、ふと、門の前に誰かが立っていた。橙色の髪をしている。演練で見かける浦島の色に似ていて全く違う、オレンジという果物に似た色。そして何よりその髪を持つ誰かは、まだ未熟な少女に見えた。
 侵入者だろうか。俺はそう考えながらも、何かがおかしいとの直感を感じながら彼女へと歩いて近寄ったのだった。

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