07

夢主視点


 畑を案内してもらった次の日。朝ごはんの時間に愛染さんが町に出かけようと言った。
「今日は休みだからな! 」
「やすみ? 」
「主が一週間に一日の休みを設けてるんだ。つまり今日は殆どの刀が休みの日ってことだな」
「主さんがちょうど町に買い物するって言ってたし、獅子王は前に付き添いするって決めてただろ? 」
「主に聞いてからなー」
「ええー! 」
 ぶうと頬を膨らませる愛染さんに、クスクスと笑い声が聞こえた。そちらを見れば審神者さんがごめんごめんと笑っていた。
「愛染もヒカルちゃんも一緒に行こっか! 町なら政府も許してくれるだろうし」
「どういうことですか? 」
 そう問いかけると獅子王さんが苦笑した。
「この本丸はちょっと他と事情が違ってな」
 降りられる町も政府の目が行き届いているところだけだから安心するようにと言われた。そんなに町って危険なのだろうか。
「あ、行く町はヒカルちゃんのよく知る現代日本じゃないからね? 時代は多分江戸辺りで、うーん、あの町は政府が呼び寄せたいろんな時代の商人がいるんだけど、まあ大体江戸の町だと思ってれば間違いないかな」
「主さん相変わらずふわっとしてんな」
「しょうがないでしょ私もよく知らないんだから」
「まああんまり町に降りねえもんなあ」
 愛染さんはそう言って味噌汁をすすった。それはちょっとお行儀が悪いのではないだろうか。


 かくして私は審神者さんに言われた和服を着て集合場所らしい門の前に来た。門は私が立っていたあの門である。
「お、きたきた! 」
「ヒカルはちゃんと着物を着れたんだな」
 そうね私も驚いたよと審神者さんと獅子王さんは笑っていた。前に記憶したのだが、そんなに変なことだろうか。ちなみに審神者さんは若葉色の着物で、私は赤色の着物である。オレンジ色の髪と目によく合うらしい。
 じゃあ行こっかと審神者さんが門に手をかざした。ふわりと浮き上がった魔法陣のようなものの上でするりと手を回すと門が僅かに開いた。獅子王さんと愛染さんがせえのと声を揃えて門を押すと扉が開く。そしてその外に広がる光景に、私は目を見開いたのだった。

 そこは賑やかな町だった。露店が多く見られるそこは商店街のようでいて朝市のようでもあった。また、着物を着た人ばかりではなく洋服を着た商人の姿も見える。買い物客は老若男女様々で、特徴的なのは刀剣男士さんの姿が見えることだった。
「じゃあヒカルちゃん。ここから先は私のことを黒って呼んでね」
「くろさん? 」
「うん。審神者を識別するための名前なの。この町にはたくさんの審神者が買い物に来てるからね」
「審神者さんって沢山いるんですか」
「そうだよ、数え切れないぐらいね」
 じゃあはぐれないようにねと審神者さんが門の外へ出たので、私は獅子王さんと愛染さんと共に足を踏み出したのだった。

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