turb♀こちら刀剣女士寮です!

ひとりぼっちガール

膝+大包♀/ひとりぼっちガール/他本丸の獅子王♀が出てきます。


 買い物である。
 大包平はメモを見ながら歩く。その隣を膝丸が荷物を持ちながら歩いていた。
「持たせてしまって悪いな」
「いや、構わん。どうせ二人揃って手が塞がることになるだろう」
「一人でも持てないことは無いのだが」
「嵩張るからな」
 大包平は女士だが、ステータスは男士の大包平と変わらない。刀剣男士は付喪神であって人ではないので正直物理的な法則とかスルーされている事例が多い。たまに見た目通りにか弱い女士や男士もいるが、大抵は不思議な神様パワー(神力)で見た目より力持ちであるし、強い。
 ということで大包平と膝丸が並んで歩いていて膝丸だけが荷物を持っているのは別に男である自分の方が力があるから等ではなく、厨番に頼まれた買い物なので、厨に立つ事が多い大包平が品物を見比べたりする為に手が空いていた方が都合が良い、という理由だった。
「それにしても、書付以外にも入用になりそうな物が案外あるな……膝丸も何か欲しいものはあるか?」
「俺は特にないな。あまり買うと持てなくなるぞ」
「全くもって正論だな。今日は諦めるか」
 大包平はため息をひとつ吐いて、メモを再び眺めた。

 買ったのは主に調味料である。本丸で自給自足するには無理があるそれらを買い込み、二振りは喫茶店に立ち寄った。どこかの本丸の燭台切がマスターをしているこの喫茶店は本来なら予約しなければ入れない人気店だが、大包平は気にせず入店する。
 するりと振り返った店員の大倶利伽羅は、大包平を確認するなり直ぐに裏に引っ込む。するとバックヤードからぱたぱたと金色の髪を揺らして女士が現れた。
「大包平さん、久しぶり!」
「久しぶりだな獅子王。手紙はきちんと届いたぞ」
「よかったー! あ、そっちの膝丸さんは初めましてだな。俺は大和国の獅子王だ」
「こちらこそ初めまして、備前の膝丸だ」
「では席に案内するぜ!」
 獅子王は喫茶店の制服のスカートをひらひらと揺らしながら、二振りを奥のテーブルに案内すると、飲み物を持ってきますとテーブルから離れた。
「それにしても、良かったのか」
「何がだ?」
「俺がここにいたら相談が難しいということはないのかと」
「それなら平気だ。むしろ男士の意見も聞きたいからな」
 大包平の言い分に、膝丸はそういうものかと体の力を抜いた。

 獅子王は戻ってくるとテーブルに人数分のコーヒーを置いた。これは相談料ですと笑ってから、すぐに本題に入った。
「実は、例のものが届いたんだけど」
「パジャマとスキンケアセットだろう」
「わー! そうだけど!」
「今まで手入れしていなかった事にむしろ驚くぞ」
「いや、それは……俺の所属する本丸は、女士が俺ひとりだから、知らなくって……そんでもっていざ来たら恥ずかしくってさ」
「最初は物珍しく見られるのは仕方ないと割り切るしかないな。膝丸もそう思うだろう」
「ああ、スキンケアとは化粧水等だろう? 確かに最初は物珍しかったが、慣れればそういうものかと思うが」
「うう、そこに辿り着くまでが恥ずかしいんだって」
「でも使ってみたいんだろう?」
「う、うん。だって女士寮の獅子王が使ってたやつ貸してもらったらぴかぴかになったし……」
「自分を磨きたいと思うことは何も悪いことじゃないぞ? まあ、無理して行うことでもないがな」
「うう……」
 獅子王が悩んでいるのを見て、膝丸はふむと口を開いた。
「スキンケアやパジャマを使用し始める前に、信用のできる刀に事情を話しておくのはどうだ?」
「あ、そっか」
 獅子王はぽんと手を叩き、それならできそうだと笑う。大包平もまた、なるほどなと頷いた。
「膝丸を連れてきて良かったな」
「少しは役に立てたようで何よりだ」
「話せそうなのは伊達のやつらかな。ここで働いてるから、店終わったら話そうと思う。大包平さんも膝丸さんも、相談に乗ってくれてありがとな!」
 膝丸はこれぐらいしか出来ないがと苦笑し、大包平は頑張れよと獅子王に応援の言葉を伝えた。

 コーヒーを飲み終えると大包平と膝丸は荷物を抱えて喫茶店を出た。
「帰ったら獅子王に一声かけないとな」
「報連相は大事だな。ところで、きみは最近パジャマを着てるのか?」
「突然だな。普段は着ていないぞ。パジャマパーティーをするときだけだ」
「なるほど」
 さっさと帰って厨番を手伝わなければと大包平は歩みを速め、膝丸はその後に続いたのだった。



おまけ
他本丸の獅子王♀
大和国の第×××本丸の刀剣女士。本丸の唯一の女士で、伊達組と仲が良い。自分はじっちゃんの誉なので、常にぴかぴかにしていたい個体。つまり身なりに気をつけるタイプの獅子王である。せっかく女性の器なのだから、女性らしいおしゃれにもとても興味がある。買ったパジャマは本人曰く「ふわふわでもこもこなやつ」らしい。
伊達組+獅子王♀で喫茶店を経営しており、マスター燭台切、ウェイター大倶利伽羅と太鼓鐘、ウェイトレス獅子王、キッチン全般担当の鶴丸で回している。マスター燭台切は接客も調理も何もかも行っている。


- ナノ -