turb♀こちら刀剣女士寮です!

買い物/獅子王♀+鶴丸

こちら刀剣女士寮です!/買い物/獅子王♀+鶴丸


「獅子王。買い物に行くんだが、きみも来るかい」
「お、いいな。俺も欲しい物あってさ」
 女士寮に客人が来ていない日。獅子王が所謂男士高校生組の刀たちとゲームしていると、鶴丸が声をかけてきた。女士の陸奥守が反対する前に、鶴丸と獅子王は行ってくると万屋街に出かけた。
 万屋街は相変わらず人もモノも多い。商いを求めて往来が絶えないそこで、獅子王と鶴丸は露天の茶器を眺めていた。
「女士寮に新しい刀が来ただろう」
「福ちゃんだな」
「そう、彼女だ。光坊の姉さんだからな、贈り物がしたいんだ」
「福島にも贈ってたな。確か、あのときは」
「花柄の湯呑を渡したぜ」
「そうだったな」
「で、だ。福ちゃんは何がいいか」
「俺も分かんねえ」
「だろうな。だが、一振りであれこれ考えるより、きみがいた方がいいだろう」
「まあ、女士に聞いたのは正解だな」
 獅子王はむむと眉を寄せる。鶴丸が、これはどうだと抹茶の茶碗を見せた。
「ピンとこない」
「そうか」
「福ちゃんは女性らしさも刀らしさもとてもあるからさ、こう、実用的なのがいい」
「ほう」
「例えば、風呂敷とか」
「なるほどな」
 鶴丸はそれなら染め物屋に行こうかと獅子王の手を引っ張る。二振りの手は薄い。互いに薄いやつと思いながら、進んだ。
 染め物屋に着くと、鶴丸と獅子王で花柄の風呂敷を頼む。実物が上がるのは、一週間以上先らしい。
 果物屋の隣りにあるフルーツパーラーで、ジュースとタルトを食べて休憩する。獅子王はイチゴタルトを崩しながら、鶴丸はマメだなと言った。
「知り合いの家族だからって、物を贈るやつなかなかいないぜ」
「そうかい? まあ、光坊がそれだけ良くしてくれてるからな」
「介護任せてんじゃねえぞ爺」
「何言ってるんだ爺サーの孫」
 まあそれは置いておくとして。獅子王は真っ赤なイチゴを口に入れた。噛むとジュワリと果汁が溢れた。甘酸っぱくて、香りが良い。
「燭台切と福ちゃんの仲はどうなんだ?」
「つかず離れずだな。光坊が福島光忠の扱いに慣れたから、変に拗れてもいない」
「先に一振り目が居たことは大きいわけか」
「あと長船全員に言えるんだが」
 鶴丸がゆっくりと言った。
「見た目がホストクラブなんだよなあ」
「それ従業員側に福ちゃんを加算してるだろ」
「当たり前だ」
「一文字のヤのつく自由業感よりはマシなんだが」
「それ、言うやつに言ったら東京湾に沈められるぜ」
「きみなら平気だろう」
「まあそうだけどさ」
「とにかく、福ちゃんの教育に悪いからあまり男士寮に来ないほうがいい」
「無茶言うなってば」
「そのための風呂敷だ」
「それ長船たちに怒られねえ?」
「……怒られるな」
「だろ。素直に不安なことは燭台切たちと話し合うこと」
「福ちゃんも一緒に?」
「当然だな!」
 それを聞いた鶴丸は、致し方なしかと、アーモンドタルトを口にしたのだった。


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