ゆううつ2/福島♀+獅子王♀
ゆううつ2/福島♀+獅子王♀/こちら刀剣女士寮です!/ゆううつの続きです。
「獅子王さん」
福島が控えめに話しかけると、獅子王はくるりと振り返って、にこりと笑う。
「どうした、美濃の福島」
ああ、許されている。福島は涙が滲んだ。
ブラック本丸というものではなかった。ただ、女性とはかくあるべきという偶像を押し付けられたのだ。
「俺たちは女性の前に刀だ。そういうことを、人間は理解しきれない時がある」
今日の研修を終えた夜。蛍がぽうぽうと輝く中で、獅子王はゆったりと語った。福島はそんな獅子王の隣で白湯を飲んでいる。
「刀として、女の性を持つ者として。なあ美濃の福島。どっちが大切だと思う?」
「刀、として、かな」
「そうか。これはな、答えがない問いなんだ。人それぞれと、人間が言うように、刀の個体によって、答えが違う」
でも、美濃の福島は刀として在りたいのだと語るのなら。
「そのことを審神者と話し合うべきだ。今はまだ、女性としても、刀としても、知識が足りない。研修頑張ろうな」
「うん」
よし、いい子。獅子王が笑うのを見た福島は、胸が満たされる心地がした。
早朝。まだ女士寮に慣れていない福島は、睡眠がうまく取れず、目覚めてしまった。いそいそと起き上がり、居間に向かうと、厨から音がした。
そっと覗けば、女士寮の大包平と獅子王が並んで立っている。獅子王はすぐに福島に気がついて、ひらひらと手を振った。
「おはよう美濃の福島」
「お、おはよう」
「おはよう!! あまり眠れなかったのか、朝餉までゆっくりするといい」
「大包平、声がでかいってば」
む、と大包平が口を閉じた。福島は大丈夫と微笑む。
「居間に居てもいいかい」
「勿論だぜ。俺は仕事があるから、執務室に居るな」
「美濃の。温かいスープでも飲むか?」
「え、そんな」
「貰っとけ。夏の景趣だけど、この時間だと体が冷えるぜ」
獅子王の勧めでスープの入ったマグをもらう。温かなスープに、じんと体が温まった。
女士寮の彼女たちと別れて、福島は居間に向かう。鵺が部屋の隅ですうすうと眠っている。女士寮の鵺も、女性なのだとか。福島は、男子禁制だと言われて、それが守れているのは、鵺の力もあるのではないかと思った。
女士ばかりの空間はまだ慣れないし、自分の本丸に帰ったところで、女士は福島一振りだ。でも、女士であることを、疎んではならないのだ。精神と肉体のバランスが、重要であると、先生役の陸奥守が言っていた。
「……よし」
今日も頑張ろう。福島がそう呟くと、女士寮の愛染が戦から帰ってきたのだった。