中学三年生/マジバ


「赤司に目ェつけられたかもしれん」
「それは何というか」
 お疲れ様ですセンパイと笑った花宮に今すぐ水でもぶっかけてやろうかと思った。
 何の変哲も無い日曜日、場所は夕方のマジバ。ストバスでのいつものバスケの練習の後に、ワシと花宮の二人は、帰る前の軽い腹ごしらえをしていた。
 というか赤司に目をつけられたって何したんですかと、花宮はドリンクを手に呆れた顔をする。ワシはわからんとしか言えなかった。
「なんか居残り練習の許可もらいに来た赤司にマネやれ言われてな」
「やればいいじゃないですか」
「他人事やと思って。やって、中学時代のキセキは流石になあ。てか青峰だけでワシは手一杯やったし」
 五人も相手するなんて桃井と黒子にしか出来んわと言えば、青峰の相手も殆どしてなかったでしょうと花宮が冷めた声で言った。
「バスケに関してはな。他のことや」
「嗚呼、あのガングロは馬鹿でしたっけ」
「そらお前から見れば大抵のやつは馬鹿やろ」
 でも青峰は最強やからいいんやでと言ったら、親バカですかと白けた目を向けられた。失礼な、あんな息子を持った覚えは無い。
「とりあえずバスケの練習は帝光から離れたこの辺りのストバス場を使っとるから、見られたりせんやろ」
「見られたら勧誘が強くなりそうですからね」
「あとは、ひたすら助っ人の話を断っとるわけやけど」
「言い訳のレパートリーが無くなりましたか」
「不穏なこと言わんといて。それがなあ、最近は桃井も寄越すようになってな」
「は?」
 桃井にも弱いねんと顔を覆えば、花宮はジト目になった。いやほんと桃井と青峰はあかんねんて。
「アンタ本当に後輩に甘いですね」
「それお前にも言えるからな」
「……チッ」
「舌打ちやめろや」
 花宮が気まずそうに顔を逸らしたのでワシはシェイクを飲んだ。甘ったるいこれを好む黒子は相当な甘党だろうかと思いを馳せる。現実逃避である。

「とりあえず、アンタいつまでも逃げてられませんよ」
「予言なん?」
「確率の話です。というかあの赤司は馬鹿じゃないんでアンタが桃井と青峰に弱いことはもうバレてるんじゃないですか」
「わあ、心配してくれるん?」
「茶化す余裕があるなら大丈夫ですね」
「まあ、まだなあ」
 まだ余裕はあるから、しっかりせんととため息を吐けば、花宮はサッサと帝光マネにでもなればいいじゃないですかと面倒くさそうにハンバーガーを手にしたのだった。



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