カラオケ/帝光中学二年生/掌編


「ショウちゃーん!」
「おはようさん、由孝君」
 久しぶりだねと笑う由孝君の笑顔の眩しさに、ちょっと目を逸らしたのは仕方ないだろう。

 場所はカラオケ。たまたま由孝君が練習したいと言い出したので、遊ぶ場所が決まった。由孝君は飲み物を持って部屋に入ると、早速曲を入れ始めた。入れる曲は流行り物ばかりで、なるほど歌えると好印象とかってネットに書いてあったんかなとワシはフライドポテトを食べた。
 延々と由孝君が歌う。疲れてきただろうというところで、たまにワシが歌う。元々お金は由孝君が多めに払うと言っていたので、あまり歌えないことに不満は無い。だが。
「由孝君さっきから似たような曲ばかりやな」
「モテる曲を探したんだよ!」
 理由が不純すぎて乾いた笑いが溢れた。まあ、そういうところが森山らしいというか由孝君らしいというか。
 なかなか思ったように歌えないらしく、嗚呼もうと悔しそうにしている由孝君の飲み物が空になっていたので、飲み物を持ってくるわとワシは部屋を出た。
 コップ片手に歩いていると、ふっと通り道のドアが開いた。ふわりと出てきたのはピンクの髪をした。
(桃井やーー!)
 小学生の桃井かわいい。いやほんとかわいい。思わず見つめてしまったが、桃井は気がつかない様子でとたたと何処かへ走って行ってしまった。

 動揺しながら飲み物をもらい、部屋に戻る。由孝君がワシに気がついて、首を傾げた。
「ショウちゃん何か良いことあったの?」
 にやけてると言われ、思わず睨んでしまったのは仕方ない。と、思いたい。
「(いやまあ思い返すとなんか変態みたいやけどワシそんなんとちゃうし!)由孝君のアホ」
「え、何、何で俺罵倒されてるの?!」



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