飼育委員会/小学生四年生


 この学校では小学四年生になると委員会に所属するようになる。そこでワシは人気がないという飼育委員会に立候補した。
 飼育委員会は授業後にウサギ小屋の掃除をするのだ。それだけなら人気がありそうなものだが、肝心のウサギがいつも穴の中なので、人気がなかったらしい。

 各クラスから一人。そして他クラスと二人コンビを組んで掃除をしましょう。委員会の時間に指定された教室に居た先生に言われ、皆が席を立つ。ガヤガヤとコンビを組んで行く生徒たち、誰か知り合いでもいないかと見回していると、おいと声がかかった。
「うわっ千尋くんか!」
「驚かすつもりはなかった」
「知っとるよ」
 コンビを組もうと言われて、こちらこそよろしゅうと返事をする。しかしまさか千尋くんが飼育委員会になるとは。もしかして最後まで忘れられて、残ったところに入られたのだろうか。とてもあり得そうである。黒子と黛の影の薄さは前回からよく知っている。黒子についてはまだ知らんけど。
「何曜日に立候補する?」
「ウチはどの曜日でもええよ」
「習い事があるんだろ」
「それは毎日やから」
「……時間あるのか?」
「掃除の時間ぐらいはあるで」
 そうかと余り納得していない様子の千尋くんに、そっちこそ希望の日は無いのかと聞けば、金曜日が良いと言った。それならと金曜日に立候補するべく、黒板の金曜日の欄にワシと千尋くんの名前を書いた。

 他のコンビと希望の日付が被らずに、無事金曜日の当番となり、仕事の説明が終わると二人で教室を出た。由孝くん達を待とうかと言えば、頷きが返ってくる。そして何か考えているので、どうしたのかと思いながら、二人で昇降口前に立った。
 しばらく待っていると、あのさと千尋くんが声をかけてきた。どうしたんと返事をすれば、そんなに習い事をして大変ではないかと問いかけられた。ちょっと意外な反応だなあと思いながら、答える。
「大変は大変やけど、好きでやらしてもらっとるからなあ」
「好きでやってるのか」
「そうやで。やから、出来るところまでやりたいんや」
 何事も挑戦せんとなと笑えば、千尋くんはそうかと浅く頷いた。
「俺も、好きなことをもっとやってみる」
「お、何なん?」
「本を読む」
 そこで、そういえば前回の黛はラノベが好きだったと思い出した。もしかしたらこの頃からラノベ好きだったのかもしれない。その事が、少し面白く感じた。
「ええんとちゃう?」
 好きなことを、出来るうちに目一杯すればいい。何となくそう言えば、千尋くんは翔子さんは凄いなと言った。
「凄いなんてこと無いで」
「いや、凄いと思う」
 だからこそ、俺もやろうと思ったんだと千尋くんはかすかに微笑んだ。って、微笑んだ?!
「ち、千尋くんって笑えたんやな……」
「なんだそれは」
 呆れ顔になった千尋くんに、これぐらいは勘弁してとワシは苦笑したのだった。ら



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