仲間発見/帝光中学三年生/今吉視点


 昼休みである。たまには一人になりたいという時がワシにもある。家に帰れば一人だが、学校で静かに過ごしたい時もある。ということでいくつかある屋上の一つに来たわけだが。
「あ」
 見事にこちらを指を指して固まった男子生徒は灰色の髪をしていた。

「えーっと確か灰崎祥悟、君?」
「確かあんたは今吉翔一、ってあれスカート?!」
 っておい今、翔一言ったな。
「ショーゴくんパン買ってきたけど何食べるー?ってあれ今吉、さ、ん……?」
 背後では何でスカート着てるんスかと叫ぶ黄瀬。うん、何ていうか。
「キリキリ吐いてもらおうやないか」
 目を開いて言えば、二人はコクコクと頭を縦に振ったのだった。

 えっとつまり。
「黄瀬と灰崎も気がついたら園児だったんか」
「そうッスよ! もー気がついたらショーゴくんが幼馴染だしサイアク」
「それはこっちの台詞だリョータ」
「で、灰崎はバスケはせずに勉強しとるんか」
「俺は公務員になる」
「昔っからそればっかりなんスよ!」
「ていうか君ら仲良しやな」
「「それは無い(ッス)」」
 綺麗にハモった二人はギッと睨み合うが、すぐにはあとため息を吐いた。
「えっと、今吉さんは女の子なんスね」
「翔子ちゃんやでよろしくな」
「目が死んでる……」
「灰崎その哀れみの目やめろ」
「あー、今吉さん肌綺麗ッスね!」
「無理に褒めんでええよ」
 ため息を吐くと、灰崎がそういえばと言った。
「俺とリョータは前回三十歳ぐらいで死んだからっぽいけど、今吉さんは何でこうなったか原因知ってるか?」
「えっ、黄瀬と灰崎死んだん?」
「そうなんスよー事故でー」
「俺はなんか風邪が悪化したと思ったらインフルだった」
 ええと驚いて、それから考えたが、どう思い出しても前回寝て起きたらこうだった。そのまま言えば、死んだわけじゃないのかと二人とも考え込んでしまった。
「謎が増えたッスね……」
「つか寝て起きたらとか怖くね」
「ワシとしてはきみらの方が怖かったと思うんやけど。あ、花宮もワシと似たようなモンだったらしいで」
 花宮とはと首を傾げる二人に、悪童だと答えれば、ああと驚いていた。
「えーあの人も!?」
「マジかよ」
「おーマジマジ。ワシの幼馴染その1やで」
「その1って他にもいるんスか?」
「由孝君、健介君、千尋君やな」
「……よしたかくん」
「よう覚えとるやろ?」
「森山センパイ?!」
 えー何でと驚く黄瀬に、誰だそれとなってる灰崎。灰崎はもうちょっと他校を気にかけような。
「と言ってもそっちの三人は前回のこと覚えとらんけどな」
「えええ」
「露骨にショック受けてんな」
「当たり前でしょー!」
 ぎゃいぎゃい貶し合う黄瀬と灰崎は何も知らない人から見たら仲良しに見えるだろうなと思う。そしてそういえばと灰崎に向けて言った。
「灰崎の成績はどんなモンなん?」
「真ん中より上ッスよ!」
「何バラしてんだテメェ」
「ふーん。なら灰崎君、生徒会に興味あらへん?」
「……は?」
 にっこりと笑って、書記が足りなくてなあと言ってみる。
「書記は先輩が卒業したから空いとってなあ。まあ選挙があるんやけど」
「……」
「生徒会入れば内申も稼げるんやけどなあ」
「……」
 笑顔で言うと、灰崎はしばらくの沈黙の後、詳しく教えてもらえますかと折れてくれたのだった。素直で助かるわ。
「何でショーゴくんだけ誘うんスか! 俺は!?」
「だってきみバスケ部あるやろ」
「そうッスけどー!!」
 納得がいかないと拗ねる黄瀬に、まあ生徒会にいつでも顔を出してええからと言えばそうじゃないとさらに拗ねられた。こいつ、意外とおもろい。
「犬っぽくて可愛いの意味が分かったわ」
「え、何スかその評価」
「クラスの女の子が言うとった」
「ううん、喜んだらいいのか、何なのか」
「喜んどけよ犬」
「ショーゴくんが言うと悪意しか感じない却下」
「きみら仲良しやなあ」
「「無い無い」」
 揃って否定するから、やっぱり二人とも面白いと認識し直したのだった。



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