獅子王+三日月+大包平/後日チョコレート売り場は騒然とした/弊本丸駄弁りトリオです。ほぼ会話文。


「獅子王や、聞いておくれ」
「近侍の仕事しながらでいいか?」
「茶は持ってきたぞ」
「茶菓子は?」
「もうすぐ来る」
 とんと、足早に、だけど走る事なくやってくるのは大包平だ。
「おいジジイ! 茶菓子の大福を持ってきたぞ!」
「誰が作ったんだ?」
「俺だ!!」
 絶対美味しいやつだ。獅子王はそっとペンを置いた。

 近侍部屋にちゃぶ台が広げられた。囲むのは獅子王と三日月と大包平だ。つまるところ、休憩時間である。
「で、三日月は何だって?」
「先日のちよこ大作戦を覚えているか?」
「もうだいぶ前になるだろ」
「それでまあチョコレートが例に漏れずこの本丸でも流行ったわけだが、」
「そうだな。もう流行ってないけどな」
「だからな俺はまた美味しいチョコレートが食べたい」
「所謂高級なものだろう。自費で買え!!」
「だがな、チョコレート売り場はなかなかこう、きらきらとした若者たちが集まっているのだ……」
「キラキラ加減では三日月の方がキラキラしてるんじゃないか?」
「俺たち平安刀から見れば若者が大半なのは仕方ないだろう!! やましいことはないから堂々と買ってこい」
「店員たちから、あの三日月宗近がチョコレートを見てる、という目で見られた時の俺の心境を考えてはくれんか」
「三日月宗近は特に本丸差がすごいもんな」
「そういえば、シリアス本丸の三日月宗近と出会った事がある」
 大包平が回想している。
「ブラック本丸ではないが、わりと情緒を育てるという概念が抜け落ちている本丸だったらしく、演練場の近くで困っていたところを助け、年端もいかぬ迷子を届ける感覚で手首を掴み、目的地まで送り届けたら困惑された」
「うわ……」
「"肌とは温かいのだな"と言われた瞬間の俺の心境を考えろ」
「すまぬ……俺の同位体がすまぬ……」
「いや本丸差だろう。落ち着け! 茶を飲め! 大福を食え!!」
「だったら若いの連れてくか? でもそれはそれでパパ活っぽいな。いやじじまごか」
「あなや……」
「俺と獅子王と三振りで行けばいいだろう? ただし、俺たちはこうして茶を飲む時間は確保できても外で買い物をする時間を設けるのはかなり厳しい!!」
「俺はほぼ固定近侍だし、大包平は本丸内の各方面の手伝いしてるし、三日月は出陣があるからなあ」
「俺はただ、美味しいチョコレートを食べたいだけなのだが……ちなみに主に相談したら通販を勧められたぞ」
「あー、実物が見たいよな」
「そうなのだ……俺は機械が普通に使える三日月宗近だが、写真ではなく実物を目の前にして選びたくてな……」
「ジジイの休みに合わせて、獅子王と俺の仕事を調節する他はないな」
「ま、そうだな。主にまた相談しようぜ」
「助かる……礼を考えておく」
「別にいらん。俺も自費でチョコレートを買うか」
「俺もいらないって。俺も万屋街でなんか買うかあ」
 そんな初夏の本丸は今日も平和である。

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