実福/オメガバース/こころも愛も分からなくとも/α×Ω/色んな刀が出ます。


「実休のバース性はαね」
 近侍の加州清光から告げられたそれに、実休はポカンとした。
 その後、教育係になった薬研や加州から告げられたのはバース性なるものだった。曰く、審神者が特殊な性別らしく、それに反応するようにこの本丸の刀たちはバース性と言われるものを持っているらしい。審神者の性別については所属刀剣男士にも伏せられていた。よほどのものだ。
 教本も渡され、個室が与えられる。この本丸は全振り個室である。また、α性とβ性とΩ性は私室や一部の施設がそれぞれ別棟になっており、基本的に他のバース性と関わるのは出陣や遠征時だが、審神者がなるべく関わらないように編成を組んでいた。

 なお、教育係になってくれた薬研はαらしい。
 実休は不満を覚える間もなく、本丸の生活をぼんやりと送っていた。薬研からは散々危なっかしいと言われて、同じαの長谷部からも面倒を見てもらっていた。なお、宗三もαだとか。意外とよく言われるんですよねと言われたが、実休はよく分からなかった。

 ひとつき、ふたつき、と時が流れる中で、新人を卒業し、多くの誉をとった褒美として庭をもらった。それからはその秘密の庭をせっせと世話した。多くのαの仲間たち曰く、だいぶ実休の雰囲気が落ち着いたそうなので、趣味とは偉大である。

 そんな秘密の庭は実休と審神者以外は入れない仕組みにしてもらっている。審神者も、基本は立ち寄らない。誰もいないそこで植物と向き合うのが、何となく落ち着くのだ。

 しかし、かさり、とある日、音がした。キョロキョロとしている彼は刀剣男士だろう。離れているのに、ふわりと、薔薇の花の香りがした。目が合う。すぐに彼が誰か分かった。
「福島?」
「実休か?!」
 たったと福島が駆け寄ってくる。美しい刀剣男士だ。実休はこの本丸で初めて見た兄弟に、嬉しくて目元を緩める。それは福島も同じなようだ。
「この本丸では初めて会えたな。実休はαか?」
「よく分かったね。福島は?」
「ほら、チョーカーがあるだろ。Ωなんだ」
 だから会えたなんて珍しいなと福島は嬉しそうだった。

 秘密の庭を案内して、互いの本丸生活を聞く。福島の教育係は獅子王だったらしい。
「Ω棟もなかなか楽しいよ。α棟はどうなんだ?」
「うん。みんな個性的だよ」
「それはいいな」
 にしても、と福島は不思議そうだった。
「実休の話を聞くに、ここに俺は入れないはずだろう。何で来ちゃったんだ?」
「さあ……僕も仕組み自体は教えられてないからね。ただ、入れないようになってるとしか……」
「そっか。じゃあ今度審神者に聞いてみる」
「福島は審神者によく会えるのかい?」
「うん? あの人、Ω棟にはよく顔を出すよ。ほら、Ωにはヒートってあるだろ。審神者の霊力を注ぐとだいぶ楽になるからさ」
「へえ」
「αにもラットがあるんだろ?」
「うーん。ラットを起こしてる刀は見たことないなあ。だから来ないのかも」
「そうなんだ」
 ふうんと福島は不思議そうだった。

 とりあえず庭の外まで送って、福島と別れる。またなと福島は笑ったが、また会えるかは分からない。微笑んで手を振ると、福島は振り返してくれた。チリ、と胸の奥が痛かった。

「別に異性と会うなという決まりはありませんよ」
 宗三がさらりと言う。実休と二人で茶を飲んでいた。
「性別が何にせよ、刀剣男士に変わりはありませんからね」
「ふうん」
「僕もよくお小夜と待ち合わせて会いますよ」
「おさよ?」
「弟です。βですからね」
「そうなんだ」
「それで、初めて会った弟はどうでしたか」
 そうだなあと福島を思い出す。薔薇の匂いがする、綺麗な刀剣男士だった。
「綺麗だったよ」
「それは僕も見てみたいですね」
「だめ」
「そうですか」
 宗三は微笑ましそうにしていた。

 それから、秘密の庭にいると、よく福島が迷い込んで来るようになった。福島は審神者に相談したが、審神者も分からないと首を傾げたらしい。曰く、システムにエラーはないし、バグもない。術式の手順もわざわざ各方面に得意な刀剣男士や、政府の陰陽寮にまで問い合わせたが、問題はない。福島自身も、バグは抱えていない。原因不明としか言えなかった。

 ただ、ふたりで過ごす庭は実休にとってとても心地良かった。福島も楽しそうに花を見たり、実休が置いていた植物図鑑を眺めたりと楽しそうだった。相変わらず薔薇の匂いがする彼を、実休はとても気に入っていた。

「あまり入れ込むなよ」
 長谷部の言い分である。α棟の内番で畑当番をしていた。長谷部は渋い顔をしている。
「なにに?」
「Ωにだ。規律は乱すな」
「規律なんてないのに」
「風紀と言えばいいか」
「風紀? なんで?」
「教本にあっただろう」
「でも、福島は弟だよ」
「……そう思っているならいい」
 ただ、と長谷部は言った。
「何かあれば主に報告しろ」
 何か、とはなんだろう。

 秘密の庭で庭木の手入れをしていると、ふらふらとした足音がした。おかしいなと思っていると、ばたんっとヒトガタが倒れる音がする。慌てて音の方に向かうと、福島が戦装束で倒れていた。怪我がある。重傷だ。
「福島っ、福島!!」
「ん、じっ、きゅ、ごめ、」
「謝らないで、どうしよう、手入れ部屋、僕、α棟のしか知らない!」
 だが、今の福島をα棟には連れて行きたくないと思い、考えを巡らせる。そこで、はたと思いつく。β棟ならば。
「福島、ごめん、担ぐよ」
「ん、」
 血だらけの彼を背負って、実休は入ったことのないβ棟へと向かった。

 β棟が見えてくるとすぐに鶴丸が駆けつけた。β棟の管理者をしているらしい。事態としては、重傷で帰還した福島が神隠しのようになっていたので本丸全体に緊急令が放たれていたのだとか。実休が秘密の庭で倒れていたと鶴丸に言うと、彼は審神者と親しいらしく秘密の庭がこんな時に仇になるとはとぼやきつつもβ棟の手入れ部屋へと急ぎ足で案内してくれた。
 今回の手入れは札を使えないらしい。なおかつ、福島のデータチェックも改めて行うと鶴丸が教えてくれた。
「とにかく、実休は福島をβ棟まで連れてきてくれて助かったぜ」
「いや、それは」
「よく思いついたな。特に実休はα棟から出てこないって皆が言ってたからなあ」
「そういうわけじゃ、ないけど」
「んー、」
 鶴丸は小声で言った。
「これから言うことは審神者には言うな」
「え、うん」
「おそらく、福島と実休は番関係が成立してる」
「ええ? 僕、福島のうなじを噛んでないよ?」
「刀剣男士だからな。別の要因でも番になるのかもしれん。βの俺にはフェロモンだとかは分からない。番同士の繋がりもさっぱり分からん。だが、おそらくだが、番になった刀剣男士たちは混じるんだ」
「混じる?」
「ああ。神気とかじゃない。検査ではおそらく分からん。ただ、同一個体のようになる」
「それは、」
「特に福島は所在が行方不明刀だ。実休は消失……そもそも二振りとも逸話についても他の有名な奴らに比べて少ない。不安定だろう」
「まあ、うん」
「政府の検査も審神者の検査も、現存刀のデータを基礎に作られた検査基準だ。そんなものじゃ非現存刀の検査はきちんとできない」
「で、でも、だとしたら僕と福島は」
「おそらく、秘密の庭とやらからして同一刀として認知されている。そうなったのは、兄弟だからじゃない。番だからだ」
 実休は唖然とした。鶴丸は一旦話を終えて、ひとまず談話室へと案内してくれた。

 実休はβの刀たちとは交流がない。初めて会う刀たちの中には不動もいて、なかなかに楽しい時間を過ごさせてもらった。鶴丸と同じ見解の刀もいて、そういう刀からは審神者には慎重になれと警告された。

 手入れを終えた福島に会いに行くと、彼もまた鶴丸から耳打ちされたようだ。ぽかんと実休を見上げて、チョーカー越しのうなじを触っていた。
 どうしたものか。
「秘密、に、する?」
「いや、できないだろ。審神者にはいつかバレる」
「じゃあふたりで直談判に行くしかないよ。どうしてこうなったのか、身の潔白を証明しないと」
「そうだな。でも、審神者か……」
 福島が顔を曇らせる。どうしたのと実休が問いかけると、福島は様子を見守っていた鶴丸を見た。鶴丸は人払いはしてあると言った。
「あのな、実休。審神者は両性なんだ」
「は、」
「女性であり、男性である。肉体的に、先天的に、そういうお人だ」
「それ、は」
「だから、あの人は性別というものを憎んでいる。自分の体にも、両親にも、社会制度そのものにも強い憎しみを持っている」
「……」
「バース性にこだわるのはそこなんだ。あの人は性別のことになると気が尖る。気性が荒くなるんだ。だから、このことを伝えたら、どうなるか分からない。もしかしたら、床に伏せるほど傷つくかもしれない」
「……でも、言わないわけには、いかないよ」
「そうだ。実休、覚悟はあるか?」
「福島、は? 福島はどうなの?」
「俺は、覚悟してる。元々、審神者にはよく会うから。実休は」
「僕、は」
 きゅ、と手を握りしめる。もし、審神者に何か言われたら。糾弾されたら。目の前で倒れられたら。
 そんなのは審神者の刀として耐えられない。でも、もし、福島と会えなくなったら。
 それこそ、耐えられない。
「福島」
「なんだよ」
「僕、福島に伝えたいことがある」
 あのね、福島。
「僕、福島と一緒に居るのがいちばん嬉しいよ」
 福島はこくんと真面目な顔で頷いた。
「俺もそうだ」
 見守っていた鶴丸が、審神者への連絡をするぞと言った。

 審神者との面談は直ぐに行われた。うなじを噛んでいないがおそらく番関係が成立していること、互いが共に過ごす時間が気が楽であること、決して性的な触れ合いはしてこなかったこと。淡々と報告する。審神者は始終苦しそうだったが、頷いた。そして、番契約が本当かどうかは福島のヒートの時に調べることになり、仮の番関係として承認した。

 α棟に戻ると、宗三が席を用意してくれた。薬研と宗三と長谷部にことのあらましを説明すると、三振りとも興味深そうだった。
「ヒートの時にフェロモンが互いにしか効かなければ確実に番だな」
「だが、現状それしか番関係のチェックができないのは問題だな。こんな前例ができた以上、何かしらで調べられるようにならなければ。ああくそ、頭が痛くなってきた」
「会うだけで番にはなりませんからねえ。そうだとしたらもっと番関係の刀がいるはずですよ。僕と江雪兄様とか」
「江雪?」
「Ωです。兄ですよ。お小夜と会う時に江雪兄様ともよく会ってます。ですが、番関係にはなってませんねえ」
「俺っちもΩの兄弟とよく約束して会うが、番にはなってねえな。長谷部の旦那だって日本号と番関係じゃないだろ」
「当たり前だ!!」
 なぜ番契約が行われたのか。ひとしきりα四振り、さらには他のα棟の面々まで立ち替わりで話し合ったが、結局結論は出なかった。

 福島のヒートは周期通りなら来週らしい。今日も秘密の庭に紛れ込んだ福島からの自己報告である。審神者からの手紙も持っていて、α棟の刀と会う刀に実休へと渡してもらう予定だったとか。審神者は実休が苦手なようだと思っていたが、手紙はたくさんの謝罪や親愛に溢れていた。そして、最後には、本当にふたりが番ならば嬉しいと霊力が滲むほどの歓喜を込めて書かれていた。福島にも見せると、あの人なりに葛藤があるんだと涙を滲ませていた。

 そして福島のヒートは予定通りに訪れた。β棟で面会となり、鶴丸と不動が実休を迎え入れてくれた。
 仲良くなったβの刀たちに励まされ、福島の待つ部屋の前に立つ。ふわり、薔薇の匂いがした。ああ、福島がいる。微笑むと、鶴丸と不動が不思議そうにした。
「どうしたんだ、実休さん」
「薔薇の匂いがするでしょう? 福島の匂い、彼からいつもするんだ」
「そんな匂いしないが、フェロモンか?」
「フェロモンってこういう匂いなのかな? こう、体がぽかぽかするとかはないけど」
「ええ?」
「発情やラットの症状はないんだな?」
「無いよ」
「何か他にある? 特別ななにか」
「うーん、嬉しくはなるよ。福島だなあって思うから」
「それはバース性は関係ないよな?」
「福島さんも何か匂いを感じてるのかな」
「さあ、聞いたことないな」
 三振りで首を傾げてから、まあいいかと声をかけて戸を開いた。

 ぶわりと花蜜なようなにおいがした。薔薇の匂いもするが、とにかく花蜜のにおいが凄まじい。実休がくら、と立ちくらみを起こすと、鶴丸と不動が支えてくれた。福島の方も、目を丸くして、頬を染めていた。
「実休、会えて良かった。大丈夫か?」
「うん、なんとか。これがフェロモン? 初めて感じた。すごいね、花蜜みたいだ」
「そうなんだ。俺も実休のフェロモンを初めて感じたよ。檸檬みたいなにおいだ」
 番契約は本当に為されていたのだ。

 しかしだからと言って特にどうということもなく。ふたりがのんびりと会話を交わすのを鶴丸と不動は不思議そうに見ていた。実休が暴れたり、福島も異常があるかもしれないと身構えていたのに、結果としては実休が立ちくらみを起こした程度である。
「Ωとαってこういうのじゃないよね?」
「そのはずなんだがなあ」
 不動と鶴丸は首を傾げた。

 それから実休の秘密の庭は福島がいつでも入れるようにシステムを組み直し、実休はα棟、福島はΩ棟で暮らしている。秘密の庭で毎日会っているので実休は何ら問題はないし、福島も満足らしい。これには本丸中が毒気を抜かれて、刀剣男士としてまともに戦えるならと、なんとか受け入れた。
「そういえば福島からずっと薔薇の匂いがするんだ」
 秘密の庭で薬草茶を飲みながら言うと、福島は不思議そうにした。
「俺から? 香水とかはつけてないけど……あ、俺も思ってたんだ」
「なに?」
「初めて実休に会った時からいつもラベンダーの香りがしてて、薬草園にもあるからそれの匂いかと思ってたんだ。でも触ってなくても匂いがするから何でだろうって」
「フェロモンは違ったよね」
「うん。全然違う匂いだった」
「うーん?」
「分からないな。審神者に報告しておく」
「僕からも報告するよ」
「おう。あと特に性的興奮とか無いんだよな」
「そうだね。元々僕は感じにくい方だと思ってはいたけど」
「俺もだよ。ヒートの時もいつも性的欲求じゃなくて頭痛と吐き気が酷かったんだ。番になってからは全くなくなったけど」
「それは良かったな。うーん、僕らってもしかして不能なのかな?」
「いや全く欲が無いわけじゃないでしょ」
「そうだね」
「じゃあ何だろう」
 そもそもと、実休は呟いた。
「福島がここに来てくれるから、僕はラットを起こさなかったんだと思う」
「ここ、実休の個人的な場所だからなあ。巣ってことか?」
「そうかもしれない。福島を囲ってるわけじゃないけど、精神的に、それでだいぶ満足してるのかも。バース性もそれで落ち着いてる気がしてきたよ」
「そうすると、Ωは番の匂いがついた服で巣作りするっていうぐらい、番の匂いで安心するって教本にあったし、例えばこの庭が実休の巣なら、そこに定期的に居ればバース性が安定してもおかしくない、か?」
「そうかも」
 まあ分からないけれど。互いにくすくすと笑って、とにかく今は目の前の番と過ごす時間のためにあれこれと日常の話をしたのだった。


・・・


おまけ

β鶴丸とΩ獅子王
「落ち着け獅子王」
「落ち着いてる」
「何がそんなに気に食わないんだ」
「俺の教え子だぞ!」
「手を出したわけでもあるまいし」
「そうだよ! 実休はマーキングもしない!!」
「じゃあ何だよ」
「福島が可愛く無いってのかよ!! 少しは手を出せ! 口付けぐらいしろ!!」
「そっちかよ!!」

α宗三とΩ江雪
「丸くおさまりましたね」
「そう、ですね……」
「江雪兄様は何か困ったこととかあります? 実休に伝えておきますけど」
「なにも……」
「そうですか。畑仕事はどうです?」
「じつに、良いですよ……宗三」
「はい」
「気にかけて、ありがとうございます……」
「いえ、これぐらいはしますよ」

β燭台切とα太鼓鐘
「貞ちゃん聞いて」
「おうどうしたみっちゃん」
「僕が一度も会えなかった兄たちが番になってる」
「そうだな」
「いやいいんだよ、僕はよく遠征に行ってし、厨に立ってたし、会う時間なんて無かったし」
「そうだな」
「でもさあ! 一言あってもよくない?!」
「みっちゃん……自分から会いに行けば?」
「今更無理!! 格好がつかないでしょ!!」
「難儀だなあ」

α薬研とΩ秋田
「薬研兄さんこんにちは!」
「あ、こら、α棟に突然来るな」
「えへへ、大丈夫です!」
「何が大丈夫なんだか。ヒートが重い個体だろ、知ってるぜ」
「はい! 今はヒートじゃないです!」
「当たり前だ」
「あの、薬研兄さんと文通したくて」
「文通? 何でだ?」
「福島さんに相談したんです! 薬研兄さんとおしゃべりしたいけど、薬研兄さん忙しいから……だったら文通だ!と!」
「別にいいけど、文の飛ばし方は覚えてるか?」
「もちろんです! ふーってやるんですよね」
「まあそんな感じだ。ちゃんと文通してやるから今日は帰りな」
「はい! ではまた!」
「はいよ。気をつけて帰れよ」

α長谷部とΩ日本号
「日本号っ!!」
「あ? どうした」
「福島の体調は大丈夫か? 寝込んでいないか? 噛み跡はないか? 神気は?」
「落ち着け。実休と会うだろ」
「あいつの証言は頼りにならん!!」
「信用してやれよ。福島なら平気だ。普段通りに花を飾って回ってるぜ」
「ならいいが……。はあ、実休が何かやらかさないかが不安だ」
「信用してやれよ」
「信用できるか!!」
「お前は実休をなんだと思ってんだよ……」
「福島とは同じ部隊で戦ったことがある」
「あ? そうなのか?」
「実に良い刀だ。戦場では無尽に立ち回り、それ以外ではよく気が回る」
「だろうな」
「実休には勿体無い」
「そこか?」
「日本号こそ気に入らんことはないのか!」
「福島が幸せそうだから別になんとも思わねえよ」
「ああああ」
「壊れんな。博多呼ぶか?」
「癒し……」
「博多呼ぶわ」

α大倶利伽羅とΩ福島
「やあ大倶利伽羅くん」
「時間をとってすまない」
「構わないよ。火車くんだね」
「ああ。文を頼めるか」
「飛ばせばいいのに」
「審神者に感知されたくない」
「そうか……火車くんのヒートは相変わらず重いよ」
「……そうか」
「俺のように番を持てば体質改善になる、と思ってるんだよね」
「ああ」
「でも、俺と実休は異例として、通常はΩのうなじをαが噛むことで番が成立するよ」
「ああ」
「はあ。真っ直ぐな子だね」
「そんなことを言うのはあなたぐらいだ」
「そうか?」
「では、文は頼んだ」
「うん。またね」

β加州とα実休
「実休、呼び出してごめんね」
「ううん。構わないよ、どうしたの? 審神者に何かあった?」
「いや、実休に改めて性教育しようと言う話になってさあ」
「なんで?」
「あまりにも何も無いから主が自分のせいかもしれないって悩んでて」
「ええ?」
「福島にも性教育受けてもらうからね」
「いいけど、そこまでしなくても」
「確かにそれぞれのペースがあるけど、確実な番だって発覚してから何日経つか分かる?」
「……数えてないなあ」
「その顔は覚えてるね。一ヶ月だよ。流石に手を繋ぐぐらいはしなよ。性教育以前の問題だよ」
「福島に不満はなさそうだよ」
「主だけじゃなく周囲も気を揉んでるんだよ! それとも何? 恋愛について勉強する?」
「いやそれはちょっと」
「もっと、なんかこう、さあ、無いの?!」
「僕の庭に福島がいるだけで満足かな」
「ああもうやだ」

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