実福/平穏/仲良く暮らしている話
pixiv1600フォロワーお礼リクエスト企画作品になります。ねこいかし様、リクエストありがとうございました!


 朝である。福島はもぞりと目覚めた。同室の実休はとっくに起きていて、おはようと笑いかけてくる。
「まだ寝ていてもいいんだよ」
「いや、起きるよ。実休は庭仕事?」
「うん。福島は、散歩でもするといいよ」
「いい花はあるかい?」
「審神者に渡せそうなものは無いかも」
「そうかあ」
 そうして実休は行ってくるねと福島の額に口付けをひとつする。福島も、行ってらっしゃいと頬に口付けた。

 ふらふらと福島が歩いていると、本丸が徐々に動き出すのがわかる。厨からは朝餉の匂い。刀たちの話し声。審神者の通達で、食堂に向かった。

 朝餉を食べようとすると、隣に実休がやって来た。ほんのりと甘い匂いがする。花の匂いだ。瞬きをすると、実休はふふと笑って福島の頬を撫でる。
「びっくりした?」
「まあね。やっぱり花があるんじゃないか」
「でも、審神者には向かないよ」
「花言葉?」
「そんな感じだね」
 いただきますと、二人で食べ始める。審神者はとっくに食べ始めているらしかった。

 皆が起きているので、福島は本丸の花の世話に向かう。まずは審神者の部屋だ。あれこれと話し合いながら、花の世話をする。水を換えたり、時折茎を切ったりする。次に玄関、食堂、と共用スペースの花の世話をする。

 そうこうしているとすぐに昼餉の時間だ。食堂に向かうと、おにぎりなどを渡される。実休と食べておいでとのことだった。
 せっせと歩いて実休の庭に向かう。柵の外から声をかけると、花の影からひょいと顔を出した。
「福島?」
「昼餉の時間だよ。ほら、おにぎりとお茶」
「わあ、助かるよ。ありがとう」
 おにぎりの具は梅干しと鮭だった。

 実休の庭をふわふわと歩く。確かにいい花があるものの、毒性や花言葉が確かに部屋に飾ることに向かなかった。
「福島、大丈夫?」
「うん。平気だけど、どうかした?」
「なんだかふらふらしてるよ」
「昨日、夜更かししたからね」
「ああ、本を読んでたね。そっか」
 あまり無理はしないでね。実休の優しい言葉に、福島はもちろんと笑った。

 それから夕方になると屋敷に戻り、休憩を経てから、夕餉や風呂などを済ませる。
 夜、ふたりの部屋に入ると、実休は眠たそうだった。
「寝るかい?」
「うん……福島も、おいで」
「布団を敷くよ、ほら退いて」
「うう」
 よいしょと布団を敷くと、実休が福島を引き寄せる。ぎゅうと抱きしめて、ころんと寝転がった。
「実休?」
「一緒に寝ようよ」
「構わないけど、寝辛いだろう」
「そんなことない。福島はあったかくて好き」
 そうして実休はちうと福島の首筋に口付けた。
「閨は明日までおあずけ」
「う、うん」
「明後日は休みだから」
「そうだね」
「福島、おやすみ」
「おやすみ、実休」
 そうしてすうっと眠った実休に、福島は全くもうと擦り寄って目を閉じたのだった。

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