快晴/平安組/獅子王中心/現パロ


 二階建ての小さなボロアパート。その二階の真ん中が獅子王の借りる部屋だ。

 朝、まだうっすらと暗い時間に起きた獅子王はテキパキとジャージに着替えた。昨日のうちにまとめておいたゴミ袋を手に外に出ると、がこがこと音を鳴らして階段を降り、ゴミ袋を指定の位置に置く。するとおはようと大家の石切丸が声をかけてきた。
「石切丸さんおはよー。今日はちょっと寒いな」
「そうだね。でも昼は暑くなるみたいだから気をつけて。これから走りに行くの?」
「おう!」
「いってらっしゃい」
 ひらひらと手を振って見送られて、獅子王はいつものコースでランニングを済ませる。
 戻る頃には日が昇っていた。

「おお、おはよう獅子王。いい天気だな」
「三日月さんおはよー。今帰ったのか?」
「はっはっはっ」
 まあそうだなと三日月はスーツ姿で笑った。明らかにボロアパートに場違いな高級スーツに獅子王は驚くことなく、さっさと着替えろよなと言って二階へと向かった。
 二階の奥、角部屋の扉が勢いよく開く。飛び出してきた白い髪に、獅子王はおはようと声をかけた。赤い目がぱっと金色を見る。
「おはようございます!」
「おはよー、今剣にしては早いな」
「きょうはにっちょくなんですよ!」
 それではと今剣は二階から飛び降りた。柔らかな草地に着地すると手を振って駆け出して行く。危ないなと苦笑しながら、獅子王は部屋に入った。
 ジャージから制服のブレザーに着替えて、朝食はどうするかと冷蔵庫を覗き込んだところで扉の外から声をかけられた。獅子王がすぐに扉を開くと小狐丸がおはようと立っていた。
「朝食はまだか?」
「おう、まだだけど」
「これを食え」
 差し出された一人分の弁当はデパートの地下にある有名な総菜屋のものだった。獅子王は呆れた顔をする。
「嬉しいけど、いいのかこれ」
「一人じゃ食えん」
「そんなに貰うなよ……」
 ありがとうと獅子王が弁当を受け取ると、すぐ食べるようにと言って小狐丸は立ち去った。なお、小狐丸の姿は派手ではないがスーツだった。
 総菜弁当を食べて、荷物を確認し、獅子王は部屋を出た。きちんと鍵を閉め、階段を降りる。ぱちぱちと木を切る音がして振り返れば、岩融が木の剪定をしていた。通り道を塞がれるのは困るからと笑っていた。

 そうしてボロアパートの前に立つと、白い高級車が獅子王の前に止まった。やあと声をかけられて、獅子王は挨拶をする。
「おはよー鶴丸」
「おはよう獅子王。乗るか?」
「そんな目立つ車に乗れるか。普通に学校行くから」
「電車とバスは大変だろう」
「定期買ってるから」
「やはり俺が送り迎えした方が安く済むぞ?」
「運転してるのは鶴丸じゃないだろ」
 じゃあなと獅子王が話を切り上げると、鶴丸は苦笑して車を走らせた。立ち去る高級車を横目に、獅子王はボロアパートの前でグッと背伸びをしてから、今日もいい天気だと呟いたのだった。

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