燭台切+福島/感謝の形/Twitterアンケートより/上杉組も出てきます


 基本的には計って混ぜて、焼くだけだ。
「そうきんちょうしないで、ね?」
「こういうのは小豆くんの領分だろう? 俺にできるかな」
「だいじょうぶ。福ちゃんはきようだから」
「だといいけど。光忠に喜んでもらえるものを作りたいな」
 よし、頑張ろう。福島が気合を入れたので、それじゃあ、まずはざいりょうをそろえようね。小豆は笑顔で進めた。
 慎重に粉類を軽量し、ほんの少しの牛乳や卵も用意する。小豆の手伝いにより、円滑に作業は進んだ。そこへ、こんにちはと五虎退がやってきた。おやと振り向けば、謙信と姫鶴、そして山鳥毛もいた。
「あ、あの、クッキーを作ってると、聞いて」
「てつだうんだぞ!」
「多めに作ってるなら、よろしく」
「迷惑でなければいいんだが」
 いいかな。小豆が福島を見る。勿論構わないよと、福島は笑顔で受け入れた。
 生地を休ませている間に、上杉の刀たちと抜き型を選ぶ。あれこれと見て、福島は花の抜き型を選んだ。
 休ませた生地を型抜きする。福島が慣れぬ作業に戸惑うのを、姫鶴や山鳥毛はゆっくりでいいと急かさなかった。
 型抜きを終えると、小豆が予熱しておいたオーブンに入れる。きちんと焼けるといいけれど。不安そうな福島に、上杉の刀たちは大丈夫と麗らかに笑っていた。
 時間まで雑談していると、生地の焼けるいい匂いがしてくる。時間になると、小豆がオーブンからクッキーを出した。焦げ目なく、バニラ生地とココア生地がきれいに焼けていた。
「さめたら、らっぴんぐ、しようね」
「うん。そうしよう」
 包装紙なら予備があったはず。福島が部屋まで取りに行くので、謙信と五虎退がついていった。
 三振りで包装紙を選んでから厨に戻ると、小豆がホットミルクを全員分に作っていた。それを飲みながら、雑談する。
 夕飯作りの前にクッキーが冷めたので、せっせとラッピングする。透明な袋に、リボンを結んだ。簡単だが、見栄えは悪くなかった。
 夕飯作りの時間になる前に、上杉の刀たちと分かれて、福島はたったかと自室に戻った。
 光忠部屋に入ると、まだ燭台切は居なかった。ほっとして、福島はメッセージカードと、用意しておいた花を、クッキーに添えて、燭台切の机に置く。これで良し。福島が満足したところで、あれと声がした。
「何してるの?」
 きょとんとした燭台切に、夕飯作りの時間ではと福島は驚いた。
「エプロンを忘れたから取りに来たんだけど……これ、クッキーかい?」
「よく分かったね」
「いい匂いがしてたもの。ねえ、これは僕に?」
「うん、そうだよ」
 迷惑でなければ、受け取ってほしいな。福島の言葉に、受け取るよと燭台切は微笑む。
「でも、急にどうしたんだい」
「日頃の感謝を込めて、かな」
「いつものことなのに」
「何時もだからって、感謝を怠ってはいけないだろう」
「それはそうだけど」
 嬉しいな。燭台切が花をひらりと舞わせた。福島は喜んでもらえて何よりと、嬉しそうに笑う。
「何かお返しするよ」
「それは大丈夫。そもそも、日頃の感謝のために、だからね」
「だとしても、お返しさせて」
 それぐらい嬉しいんだ。燭台切の言葉に、福島は、それなら待ってるよと、返事をしたのだった。

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