燭台切+福島/雪に赤/一期さんがよく喋ってます


 しんしんと降る雪を、じっと見つめる。雪に耐えて咲く椿が、景色に赤色を提供する。手元にはフラワーアレンジメントの為に買い揃えた花々がある。本当にこれで良かったのか。福島はまだ、肉の器を得て日が浅い。でも、花を飾りたいと思ったのだ。だから、これは間違いではない。何より、これに間違いはない、はずだ。
「お困りですかな」
「きみは、一期くんだったね」
「はい。一期一振といいます」
 花ですかな。一期がそっと福島の手の中を見る。うん。福島は花束を持ち上げた。
「きれいだろう」
「ええ、とても」
「きみには少し、寂しく見えるかな」
「派手好み、というわけではないのですが」
「そうかい?」
「花とは充分に美しいものでしょう」
「愛でるのに、差異は生まれないってことかい」
「そうですな」
 それでは不満でしょうか。一期の言葉に、そうでもないさと福島は微笑んだ。
「褒めてくれたのに、不満なんてないさ」
「そうでしたか」
 あなたは真っ直ぐですな。一期の微笑みに、勿論と福島は頷く。
「花には素直でありたいからね」
「なるほど」
「そうだ、一期くんは好きな花とかあるかい。部屋に飾る花にお困りだとかは」
「そういえば空いている花瓶がありますな」
「一期くんの部屋はどこ?」
「粟田口の大部屋です。でも、そろそろ部屋替えするかもしれません」
「どうしてだい?」
「刀種の関係で、弟たちとは出陣部隊が全く違いますので、生活の調子が揃わず。ならば、同じ太刀の誰かと相部屋で暮らすのはどうかと、打診されてまして」
「それは大変だ。きみと組みたい刀は山程居そうだね」
「そうでもありませんよ」
「そうかい? じゃあ、部屋が決まり次第、花を見繕うことにしよう」
「楽しみにしています」
 笑みを浮かべた一期に、福島は嬉しそうにふわりと笑う。外ではしんしんと雪が降っている。手の中には花束がある。一期は、おやと振り返った。足音がした。
「あれ、一期くん?」
「燭台切殿でしたか」
「ああ、光忠! どうしたんだい?」
「部屋に戻ってきただけだよ。あなたは花束を作ったの?」
「うん、いい出来だろう」
「とても華やかでいいね。一期くんはどうしたんだい」
「私はお兄様と話していて」
「お兄様」
「燭台切殿のお兄様では?」
「あ、そういうことか」
「光忠、どうしたんだい」
「いや何でも無いよ」
 きょとんとする福島の隣で、くすくすと一期が笑う。
「難儀ですな」
「もう……」
「どうかしたのかい?」
「何でもありません。では、私はこれで。先程のこと、頼みます」
「うん」
 一期が去っていくと、何かあったのと燭台切が質問する。福島は花を飾る約束をしたんだと嬉しそうだ。
「花に興味を持ってくれてね」
「ふうん」
「そうだ。花束を審神者に届けるんだけど、リボンはどれがいいかな」
「赤と橙かな」
「二本使いもいいね」
 じゃあそうしよう。福島がせっせと作業しているのから、燭台切はようやっと目を逸らして、部屋の中に入ったのだった。

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