愛染+獅子王/question/ローファンタジー系謎パラレル/転生/現代


 例えばさあ。赤い舌でアイスを掬いながら、愛染は言った。
「自分がもし神様だったらどうする?」
 学ランを揺らして、獅子王は答えた。
「もしそうだったら、じっちゃんを助けるぜ」

………

 灰色の目が光る。夜、獅子王はいつものバイトから帰っていた。今日も疲れた、明日はシフトが入ってないから家で勉強しよう。そんな事を考えていると、ふと携帯が鳴った。
 獅子王は不思議そうに携帯を取り出し、操作して電話に出る。
「もしもし」
『あ、獅子王?』
「愛染か、こんな時間にどうしたんだ?」
 あー、と電話口で愛染が悩む。獅子王が不審そうにすると、愛染はそれを見透かしたようなタイミングで口を開いた。
『一応、伝えといた方がいいかなって』

 うしろに、あやかしがいるぜ。

………

 どんっがらがら、どんっ
 後方からの破壊音に、獅子王は電話を繋いだまま走る。おいどういうことだよ、走りながら携帯に叫べば、愛染はハハと笑った。
『それは仕方ねえんだ。だって獅子王は神様候補だからな』
「なんっだよそれ!」
 左側に何かが横切ったので右に体を傾ける。何か黒いドロドロしたものが左側にあった植木鉢に付着、しゅんとそれを溶かしてしまった。毒か、獅子王は瞬時に判断し、ゾッとした。
「おい! 説明しろって!」
『いや、だから獅子王が神様候補だから』
「それは聞いた!」
 獅子王は走る、走る。袋小路に迷わぬように、走った。けれど、四番目の四ツ辻に差し掛かった時、化け物は目の前に現れた。
 さっきまで後ろにいたのに、獅子王は焦り、足を縺れさせてしまう。転んだ獅子王に、無慈悲にも化け物の斧が振りかざされる。手から滑り落ちた携帯から、愛染の声がした。
『死にたくないならオレを呼んでくれよ、獅子王』
 呼ぶって何だ、それは何だ、それは、それは。

「あーもう! 愛染、来い!」

 携帯の向こうで鈴の音が鳴った。

「サンキュー獅子王(モン・ディユ)! 愛染国俊(アンジュ)の参上だ!!」


………

 化け物を倒した愛染は獅子王の家までついてきた。家に上がらせた獅子王は、お茶を出してから、それでと言い出した。
「あれは何だよ、何でゲームみたいにお前は戦えるんだよ、つか神様候補って何?!」
「落ち着けって。とりあえず、あれは正しくは亡霊(ファントム)って言う」
「ファントム?」
「そんで、神様候補を付け狙ってる」
「付け狙ってる?」
「で、獅子王は神様候補なんだって」
「何で?」
「神様候補には必ず天使(アンジュ)がついてて、仕えてる神様候補のことを(モン・ディユ)って呼ぶ!」
「いやだから神様候補って何」
「オレは天使で!獅子王は俺のご主人様ってわけだ!」
「いや分かんねえよ! ご主人様って何だよ!」
「んー、神様候補ってのはあれだ。日本の神っていっぱいいるだろ? でもさ色んなことが重なって足りなくなることがある。そういう時に、神様候補が数人選ばれる。その数人が殺し合ったり権利を剥奪した合ったりして、最後の一人になったら、その一人が神様になるってやつ!」
「……すっげえ物騒なんだけど」
「ちなみに報酬とか賞金とかはないぜ!」
「まじか」
「でも神様になれるから!」
「いや別に神様になりたい訳じゃないしな?!」
 えーでも、と愛染は不思議そうにした。
「じっちゃんを助けたいって言ってたじゃん」

………

以下、謎設定

ルビは基本フランス語。
何故がバトロワ案件になったので続きません。

→獅子王
ごく普通の男子高校生。突然神様候補に選ばれる。わりと流されがち。

→来派
三人とも獅子王の天使(アンジュ)だと名乗るお隣さん。
→愛染
小学四年生。獅子王とは幼い頃から交流があった。
短刀と炎魔法を使う。
→蛍丸
小学四年生。獅子王とは幼い頃から交流があった。
大太刀と雷魔法を使う。
→明石
自宅で出来る仕事をフリーでしている。獅子王を昔から気にかけていた。
太刀と風魔法を使う。

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