燭台切光忠+福島光忠/ぼくらは今日もいきている/備前刀たちをなるべく書きたかったです。どうすればいいのか分からなくなったのでぶつ切りです。力不足……!おまけで初期刀と男士高校生組の名前もつらつら出てます。


 唯、在るが侭。

「ああ、燭台切か」
 おはよう、今日も早いな。そう声をかけてきたのは、鶯丸だった。燭台切は朝の身支度を終えていた良かったと安堵しながら、おはよう鶯丸さんと返した。
 秋。ぼうぼうと燃えるかのような紅葉に染まるこの本丸には、二つの寮がある。ひとつは蜂須賀が仕切る蜂須賀寮であり、多くの刀はこちらに住んでいる。大風呂や食堂などが近く、利便性が良いのだ。もう一つの寮が歌仙寮であり、こちらは利便性に欠けるものの、歌仙曰く風流で雅らしい。
 そして、燭台切は蜂須賀寮住みであり、鶯丸は歌仙寮の住民である。
「大包平さんはどうしたんだい?」
「昨日、無理をしていたからな。寝かせてきたぞ」
「強制かあ」
 鶯丸は、大包平を前にすると、たまに強硬手段に出る。あまり困らせちゃ駄目だよと言うと、あれが俺を困らせるんだとしれっと言い放った。
「福島はどうした?」
「彼ならもう起きてるよ」
「花畑か?」
「多分ね」
「そうか。床の間に飾る花を見繕って欲しかったんだ。助かる」
「そっか、行っておいで。あの刀なら嫌がらないから」
「だろうな」
 たったかと鶯丸は花畑に向かった。
 それを見送った燭台切はさてと武道場に足を向けた。

 跳ねる。カンッ木刀がぶつかる音。やあと顔を上げた。
「燭台切、おはよう」
「おはよう、大般若くん。今は謙信くんと小豆くんの打ち合いかな?」
「そうだな。小竜が刀を集めてるぜ」
「この時間から起きてる刀は少ないだろうに」
「だからこそ、だろうなア。福島はどうしてる?」
「彼なら花畑。鶯丸さんもね」
「大包平さんは?」
「簀巻きにされてるんじゃない?」
「はっはあ! そりゃ大変だ」
 まあそもそもあの刀は働き過ぎの嫌いがあるからいいんじゃないかね。大般若は準備運動を始めた。
「僕はきみと、でいいのかな?」
「頼むよ」
「オッケー、任せて」
 そこで小竜が、太郎太刀と膝丸と青江派を連れてきたのだった。

 打ち合いを終えて、朝風呂を済ませると、燭台切は厨に向かった。厨は獅子王が中心となって仕切っていた。歌仙は長期遠征らしい。
 手伝いは同田貫や御手杵、陸奥守に和泉守など、はつらつとした刀が多かった。獅子王と付き合いのある刀たちが、ワイワイガヤガヤと働いていた。
 彼らは燭台切に気がつくと、朝餉がそろそろ食べれるので、皆を呼び出してほしいと頼んだ。

 審神者に、朝の挨拶と朝餉の支度が終わったことを告げに向かう。執務室の前に立つと、するりと戸が開いた。福島だった。
「あ、光忠」
「どうかしたの?」
「花を届けに来たんだ」
 朝餉かな。そう首を傾げた福島に、そうだよと燭台切は説明した。

 食堂にずらりと膳が並ぶ。夜戦などがあるため、この本丸では朝餉だけは全員で摂ることになっている。もちろん、遠征でいないこともある。いないことを知るのも大事だよね。古株の加州が言っていた。
 審神者が席につくと、本日の近侍である山姥切国広の号令で食事が始まる。近侍だけは連絡事項をつらつらと読み上げ、他は静かに食べる。連絡事項が終わると、会話が始まった。
「光忠、今日は遠征かい?」
「その予定だよ。あなたは?」
「練度上げのための出陣があるね」
「それは気をつけて。隊長?」
「隊長は南泉くんだって」
「ああ、彼。よく気の回る刀だけど、コミュニケーションは大事だよ。あなたなら大丈夫だろうけど」
「分かった。気をつけるよ」
 光忠も気をつけて。福島の言葉に、燭台切はそうするよと応えた。
「ちなみに、他の隊員は?」
「ええと、山鳥毛さん、姫鶴くん、日光くん、則宗さんだったかな」
「それは、大変だろうね」
「そうなのかい?」
 彼らは同派と聞いているけど。福島が首を傾げたので、良い刀ばかりではあると、燭台切は伝えておいた。

 今日も本丸は平和である。なお、夕方に遠征から帰ると、真っ白に燃え尽きた南泉が縁側で長義と寝ていたとか何とか。

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