この星に抱かれて眠る君/みかしし/診断からお題をお借りしました


 花畑の中、ころりと丸くなり、眠る少年がいた。金色の髪を三つ編みにし、ころりと転がして寝転がった体はとても薄い。細く、薄いが、筋肉はきちんとついているので問題はないだろう。問題なのはこんなところで寝ている神経の方だ。
「獅子王や、こんなところで寝てはならんぞ」
 俺がそう言うと、金髪の少年、獅子王はううんとぎゅっと小さくなってからころりと起き上がった。すぐに三つ編みを解き、さらさらといつもの髪型に戻していく様を、相変わらず器用だなあと見守る。
「よし、おっけー。どうしたんだ三日月?」
「いや何、審神者が何やら新しい菓子をくれたのだ」
 共に食べようと小包を見せれば、水筒はと聞かれて、もちろん持たされたと答えて水筒も彼の前に出した。

 花畑の中、審神者の趣味で作られた芝生の丘に座って俺は獅子王の前で小包を解いた。そこには木箱があり、開けば中の菓子が見えた。
「お、饅頭か?」
「いや、饅頭に見せかけた羊羹らしい」
「それはまた、鶴丸が喜びそうだな……」
 獅子王は呆れた顔をしながら、容器に入った羊羹を手に取る。はい三日月の分、と渡され、あいわかったと受け取った。そして自分の分を取ると、木箱の蓋を閉め、水筒を横にいただきますと獅子王は羊羹を口にした。俺もまた、それを見て羊羹を楊枝で食べる。うむ、確かに見た目は白い饅頭だが、白いところも含めて全部が羊羹だ。
 変わった菓子だが、不味くはない。むしろ美味いと思っていると、獅子王も同じらしく、何か納得いかない様子ながら満足そうに菓子を平らげた。
 こぽこぽと茶を水筒からコップに移し、まだ温かいそれを飲む。そして、はてと気がついた。
「そういえば、どうしてあんなところで寝ていたのだ」
 花畑の中、まるで埋葬でもされるところのようだったと言えば、不吉だなあなんて獅子王は笑った。
「ただ、眠たくなった。それだけだって」
 でもそうだな、あえて言うなら。
「母上がそこにいた気がしたんだ」
 そうしてふわと笑った獅子王の、その遠く。ふわりと笑う女性を見た気がして、ああそれはと俺は気がついた。
 それは母上などではない。それはこの星そのもの、"形容し難い何か"、だと。

 しかし何、心配はいらない。何故なら彼には"あの"鵺が付いているだから、平気だろうと判断をして、俺はそっと獅子王に笑いかけた。
「気が済んだら帰るといい。俺は、そうだな、お前の隣で眠るとしよう」
「ええ、三日月だと夕方まで寝ちまいそう」
 でもまあいっか、と獅子王と共に水筒や小包を片付けて、芝生の丘から降りて、花畑の中にごろりと寝転がったのだった。

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