04:頼って欲しい、愚痴って欲しい/一期視点


 その日は快晴、出陣する部隊を見送り、さてと私は久々の休暇を満喫するとに決めました。
 本当は書類を少しでも片付けてしまおうと思ったのですが、獅子王殿に根を詰め過ぎだと言われて以来、心配をかけぬ為にも休暇を定期的にとるように心がけることにしたのです。
 さて、今日は書庫に行こうか、それとも弟たちの遊び相手になるか、嗚呼でもやはり獅子王殿に会いたい。私は獅子王殿がいそうな場所を一つずつ当たることにしました。

 四つ目、井戸の近く。そこにも居なくて、ならば次はと考えれば視界にちらりと映る黒い毛の塊。獅子王殿の鵺だと分かれば私はそちらへと歩き出しました。そこは本丸の裏側、ひと気のない小屋の近く。もう使われていない小屋の日陰で獅子王殿がうずくまっていたのです。驚いて駆け出し、近寄れば獅子王殿がふらりと顔を上げました。赤く染まった目元に、これはいけないとさきほどの井戸に戻って手拭いを濡らして獅子王殿の元へと駆け足で戻りました。目元に布を当て、どうしたのかと聞けば、へらりと獅子王殿は笑いました。
「ちょっと疲れただけ。気にすんな。」
 獅子王様は大丈夫だからな、そう笑った姿が痛々しくて、私はきっと酷い顔をしていたことでしょう。
「もっと私に頼ってください。嫌なことがあったのなら聞きます。」
「一期、そんな、いいって。」
 それとも。
「私は頼りないですか。」
 突きつけるように言えば、獅子王殿は目を見開き、そんなことはないと言う。ならば何故と聞けば、獅子王殿は自嘲の笑みを浮かべたのでした。
「俺のプライド、みたいな。」
 その言葉に話してはくれないのだと思ってしまえば、獅子王殿は優しい声で続けました。
「だから待っててくれるか? いつか、俺が話せるようになるその時までさ。」
 何処か懇願するような言葉に、私は嗚呼こんな少しでも頼ってくれるのだ、今迄一人で傷ついて隠して私に頼ってはくれなかった人だけどその心に頼るつもりはあるのだと、少しばかり安心したのでした。

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