03:恋人の友人の話/一期視点


「それで、加州が新しい爪紅がほしいって騒ぐからさー。」
 この前町に出掛けたんだ、そうからからと笑いながら話す獅子王殿は楽しそうで、友人だとは分かっていても何と無くわだかまりを感じました。
 加州殿と獅子王殿はかなり初期からこの本丸に居る刀剣男士で、付き合いが長い故に深い信頼関係があるところがあります。私は太刀の中の珍しい刀(所謂レア4というものだと主が言っていた刀)の中で一番早くにこの本丸に来たものの、やはり遅いわけでして。私が顕現した頃には獅子王殿と加州殿には隙間のない信頼関係がすっかり出来上がっていたのです。
(そもそも私は獅子王殿への想いを自覚したのがわりと最近ですし……。)
 もっと早くにこの本丸に顕現していればと悔しく思っていると、獅子王殿がそうだと笑いました。
「今度二人で町に行こうぜ。お勧めの甘味屋とか教えるからさ!」
 気に入ってくれるといいけれどとと楽しそうにする獅子王殿に、是非と伝えれば、獅子王殿はそういえばと表情を一転して不安そうな顔をしました。
「一期って甘味大丈夫だよな?」
「はい、大丈夫ですが……。」
 それがどうしたのかと思っていれば、よかったと安心した様子の獅子王殿は続けます。
「加州情報で一期は甘いもの平気って知ってたけど、実際のところは分かんねえだろ?だからさ、聞けてよかった。」
 これなら安心して案内できると笑う獅子王殿の思いやりに嬉しくなりながらも、加州情報とやらについてさらに聞き出すべきか悩んだのでした。

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