宮中/15.公言しちゃおうか


 その日は酒盛りだった。どんちゃん騒ぎの中、静かにぼくの隣に居る中原君はペースを上げずにちまちまと酒を舐めるだけだった。その普段とは違う様子に大体の仲間たちが気がついていたが、騒ぎの中に掻き消える。でもぼくは気になってこっそりと中原君に理由を聞いた。彼は恥ずかしそうに告げる。
「だって、今日は逢瀬の約束があったし。」
 その言葉に、クラリと酒が回った気がした。思わず中原君の耳元に顔を寄せ、口を開く。
「公言、しちゃおうか。」
 火が付くように赤くなる中原君の唇に口付けを落とせば、いつの間にやらこちらに意識を向けていた仲間たちが歓声を上げた。唇を放せばぼくと中原君にかけられる祝福の言葉の数々に、中原君は目を白黒させる。ぼくは笑ってぼくの恋人だと中原君の肩を引き寄せたのだった。

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