宮中/9.ふと目が合って微笑んだ


 窓枠で区切られた星空の下での逢瀬。何時も通りに中原君は隣に座る。窓のそばに二つ並べた木の椅子。背もたれのあるそれに座って、ぼくらはぽつりぽつりと雫が滴るような会話をする。日々の報告や、抱え込んだ仕事の進み具合、食事でのあれこれ。何だって話すことはあった。だけど急がなくてもいい。ぼくも中原君も、ゆっくりとお互いを知りたかった。
 目が合い、中原君は恥ずかしそうに微笑む。少し前はもっとそのままの微笑みだった。それも素敵だったが、今の微笑みだってとても魅力的だった。だからぼくも微笑み返す。いつだったか中原君が安心すると言ってくれた笑みを。
(全く同じ笑顔の日なんて無いのだろうけれど。)
 それでも、少しでも中原君と愛し合えるようにと。

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