宮中/8.あの二人って仲悪いのかな


 目を合わせたら、中原君は目を逸らした。そしてそのまま離れていくので、ぼくはううむと考える。どうやらあのペディキュア(足の爪に塗るとそう言うのだと教えてもらった)を塗った日から少しばかり避けられているようだ。理由は何と無く察せられたから良いとしてぼくが悩んでいるのは少し違うこと。
−「中原さんと宮沢さんて仲悪いのか?」
 ウィルバー君のその一言だった。どうやら仲違いをしたと思われているらしい。それはいただけなかった。最近だって避けられているとはいえ、星空を眺める夜の逢瀬に誘えば来てくれるのだ。二人きりなら笑って目を合わせてくれる中原君は、そうつまり気恥ずかしさを覚えているらしい。今更恥ずかしがらなくてもとは思うが、ペディキュアのことで少し執着心を意識させてしまったのだろう。それが嬉しいような、悩みの種のような。女性とはとても難しいものさしで恋愛の駆け引きをしているらしい。
 兎に角慣れだろうと結論付けてから、靴下を履いている足を意識する。その布の下にはお揃いの印が確かにあり、そのことに自然と笑みが溢れそうだった。

- ナノ -