宮中/7.見えないところがお揃いです


 あの子が渡してくれたのは青色をしたマニキュアというもの。足の爪に塗ってお揃いなんてどうですかと悪戯っ子のように笑う姿は全てを見透かしていて、女性には色恋沙汰で勝てないなと苦笑が漏れた。勿論、中原君には秘密だけれど。
 不安そうにぼくに素足を差し出す中原君に安心するようにと微笑みかけ、そっと足首を持ち、撫でる。体を揺らした中原君に今度は言葉で安心してほしいと伝えれば、体から力が抜けたようだった。そっと小瓶を開けて、付属している小さな刷毛で中原君の足の指を青く染める。本当は色々と手間が必要らしいが、それは飛ばしてしまっても大丈夫だとあの子は笑っていた。ただ、お揃いなのが重要なのだと。
 親指から順番に青に染めあげれば、気がついたのはキラキラと液体が光っていたということ。小さな光る粉が入ったかのようなそれはどうやらパール入りとかいうものらしい。
 塗り終えると中原君が口を開く。
「俺が、塗りたい。」
 意図が分かったのだろうその目はしっかりとぼくを見ていて、ぼくは笑みを浮かべて足を差し出したのだった。

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