宮中/5.(違う!そういう意味じゃない!)


 二人きりのぼくの自室。ベッドに並んで座って話をしていると、どうやら中原君が落ち着かない様子だった。疑問に思っていれば、手を貸してほしいと中原君が言う。だから手を差し出せば、そっと手が伸び、さわさわと指先でぼくの手の指を触る。そして満足したように手を離し、笑ってポケットから箱を取り出した。開かれたそこには二つのリング。ペアリング、と言うものだろうか。中原君は嬉しそうにその片方をぼくに渡した。指輪を付け合おうということだろうか。隠したがっていたのにと、疑問を感じて口を開けば中原君は笑う。
「部屋に仕舞っておくだけでも俺は充分さ。」
 曰く、恋人らしくないぼくらにアドバイスをした人がいたのだと。恋人同士ならペアリングなどはどうだろうか、と。しかし。
(多分、部屋に仕舞っておくだけでいいなんて本心から言うことは想像してなかっただろうなあ。)
 頭を抑えて唸る人物が瞼の裏に浮かんだ。

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