宮中/3.隠し通そうと再決意


 しばらく前の、中原君と付き合い始めてあまり経って無い頃。ぼくの部屋で中原君は教えてくれた。
 最初は隠さなきゃとは思わなかったと中原君は言う。けれど決意した時があったそうだ。それはこの屋敷の紅一点の彼女のことだ。
「あの子を見て、アブノーマルだと思っちまったんだ。怖くなった。俺はとても怖くなっちまったんだよ。」
 目を伏せて語る中原君をぼくはそっと手を繋ぐことしかできない。声は震えていないけれど、その手は氷のように冷たかった。
「否定されることが怖かったんだ。」
 そう語る目を、ぼくは見ることが出来なかった。

 そして今、中原君はぼくの部屋で語る。星空の見える場所で並んで座り、手を繋いでいた。
「隠さなきゃいけねえなと思う。」
 その目は遠くを見ていたが、ゆっくりとぼくへと視線を動かした。中原君の目に映るぼくはどんな顔なのだろう。自分では分からないそれが少しもどかしい。
「何よりも、宮沢サンの為に。」
 歪むことすらしない目に、ぼくは馬鹿だなあと笑う。逃がそうだなんてしなくて良いのに。
「ぼくはきみと鎖で繋がれていたいよ。」
 ぽろりと涙を零した中原君はやがて笑う。
「宮沢サンはずるいなア。」
 だからぼくはまだ指で数えるほどしかしていなかった口付けを落としたのだった。

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