それは立ち寄った小さな町のこと。

あたしは夕方、一人で町を散策していた。サトシはポケモンのトレーニング、デントはポケモンセンターで夕飯を作ってる。Nさんは分からないけど、きっとサトシと一緒なんだと思う。

町を歩いていたら、小さなお店を見つけた。ショウウインドウに飾られているのはブリキ製品ばかり。ブリキ製品を売るお店みたいだ。あたしは何となくそのお店に入った。扉を押すとカランとブリキのベルが鳴った。

店主は居ないみたいで、チョロネコが椅子に座っていた。あたしはチョロネコに一言言ってから店内を見始めた。小さなブリキから大きなブリキまで、世界中のブリキがあるんじゃないかと思うくらい、店内はブリキで溢れていた。ふと、白い塗装がされた小さなブリキのピアノを見つけて手にとった。軽くて、音は鳴らない飾り物。少しだけ残念で、少しだけ予想通り。棚に戻そうと、腕を動かそうとした時に声がした。

「それがほしいの?」
「え」

あたしがゆっくりと首を回して後ろを見ると、Nさんが居た。Nさんはあたしの後ろから手を伸ばして、あたしの手の中のブリキのピアノを触る。

「素敵なものだね」
「あ、Nさん…」
「なんだい?」
「どうしてここに」

Nさんはデントに頼まれたみたいなことを言って、再びあたしに聞く。

「それ、ほしい?」

あたしは思わず頷いて、Nさんがあたしからブリキのピアノを持っていってしまってから気がつく。

「あ、Nさん!あたし別に」
「ううん買ってあげるよ」
「えええっ」

何時の間にか居た店主にNさんはブリキのピアノの代金を渡して、あたしの手をとってブリキのピアノを乗せた。軽く感じたそれは、何時の間にか重みを感じて、あたしはぬるま湯みたいな気持ちになる。

「じゃあポケモンセンターに行こうか」
「は、はい」

あたしはブリキのピアノを慎重にカバンに居れて、Nさんと並んでポケモンセンターに向かった。





ちいさなブリキのピアノ
ピアノ
ひよこ屋

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