「ねえデント、」
「どうかしたのアイリス」

 とことこと歩いてきたアイリスの手元を見ると、一冊の絵本。たしかお姫様が出てくるお話だった気がする。

「あのね、おひめさまになれるかな」
「アイリスはお姫様になりたいの?」
「うん!ドレスきたい!おうじさまはデントかな」
「あのねアイリス」

 その絵本のお姫様は悲劇で終わるんだ。結局王子様に会えないまま、お姫様は死んでしまうんだ。

「そんなのいや」
「でしょう?だから」
「でもデントならあいにきてくれるよね!」

 アイリスはにこにこと笑っていた。うん、そうだね。

「僕ならお姫様を待たずに会いにいくよ」
「でしょ!」

 そうして僕らは笑い合った。





悲劇の姫君にはなりたくない
(僕らは悲劇で終わらせない!)

お伽噺5題
劣情ノイズ


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