たとえば、このてがとどいていてもあなたはわたしにこえをかけてくれましたか。
場所は9番道路、ショップR9。つまりデパートの中。
「うーん…」
彼女、アイリスの身長ではあともうちょっとで届かないという微妙な高さにある棚を彼女は恨めしく思った。ちなみに棚には最後の一つのキバゴドール。オノノクスまで鍛えた相棒が居ても、いや居るからこそ欲しいのだろう。
「あーうー」
ぷるぷると足が震える。もうちょっと、もうちょっと。
ひょいっ
「わっ」
キバゴドールが視界から消える。誰かが取ってしまったのだ。ショックで彼女は涙ぐむ。しょうがない、まだまだ涙腺の弱い子供なのだ。
(そんなぁー)
「はい、アイリス」
「へっ?」
差し出されるキバゴドール。状況が掴めないまま、アイリスは受け取る。一体誰がと思い、見上げるとそこに居たのはサンヨウジムのジムリーダー、デントだった。
「デント!」
「久しぶりだねアイリス」
「どうしてここに?」
「ここにしか売ってないものが必要になったから来たんだ。アイリスはキバゴドールが欲しくて来たの?」
「うん!」
やっとアイリスは笑顔になって、頷く。
「ありがとうデント!」
「どういたしまして。そうだ、ボクが買ってあげる。」
「え、でも、おこずかいいっぱいもってきたよ」
「いいから。ボクが買ってあげる。」
にこっと笑顔のデントに、アイリスはキバゴドールを渡す。そしてデントはすぐにレジへ向かい、お金を払う。
「はい。」
「ありがとう!わあっ」
キバゴドールの首にはリボンが巻かれていた。かわいい、と喜ぶアイリスをデントは嬉しそうに眺めていた。
「じゃあボクは他の買い物があるから…」
「わたしもいく!」
「え?」
「かってくれたおれいだよ。」
デパートデート
(デートだよ!)
(じゃあ買い物が終わったら喫茶店でお茶しようか)
(わたしクリームソーダがいい!)