目が覚めると私は別世界に来ていました。

なんて、どこの夢小説ですか。トリップってやつですか。真剣にどうしたらいいんですか。
現在私は見知らぬ部屋に立っていた。殺風景に物がない部屋で、勉強机の周りだけ教科書と思われる本が置いてあるだけだった。
私はさっきまで部屋でゴロゴロしていた。睡眠時間をやたらと長く取らなければとても動けないから、昼寝をしようとすこしの義務と確実に脳味噌にまとわりついた睡魔により寝ようとうつらうつらしていた。
そんな中、ふと眠気が飛んだ。それはとても異常なことで、私はそのことにとても驚いた。そして見知らぬ部屋に立っていることに驚いた。

体を動かして部屋をぐるりと見回した。私の背後には真新しいセーラー服がハンガーにかけてあった。窓から桜が見えた。春だというのか。季節まで違うことに驚きながら、制服のポケットに入っていた真新しい生徒手帳を開く。私のきたない字で1-B 真山千冬と書いてあった。目を見開く。名前が違った。でもきっとこの名前はこの体のものなのだろう。まだ学校の判子が押されていなかったので提出前だろうか。つまり入学式や初授業はまだということか。
生徒手帳の表をじっと見る。秀徳高校とあった。何処かで聞き覚えがある、と思ってすぐに思い当たる。黒バスだ。

秀徳高校は確か緑間さん高尾さん宮地さん大坪さん木村さんが居た学校だ。男子は学ランで女子はセーラー服。多分間違いないだろう。さて、どうしてここまで知っているのかと言われれば単に黒バスという漫画が好きで、二次創作も読んだりしていたからだ。多人数のドタバタコメディが好きな為、原作であまりピックアップされないキャラクターの名前もわりと覚えている。

そこでふと思う。この真山千冬は高校生か、と。私は高校は卒業した年齢だ。つまり若返りか。しかし別の可能性がある。成り代わりだ。
夢小説にありがちな成り代わり。もしそうだったとしたら、真山千冬というこの女の子になんて謝罪すればいいのか分からない。もしかしたら私と入れ違いになっているのかもしれない。眠気が驚くほどしない今、あの不便な性質に真山千冬という女の子の中身は耐えられるのだろうか。



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