コヨーテ+イクトミ+レイヴン/赤土三馬鹿/今日のおやつはプリンです。/短い


 レイヴンは困っていた。それはもう困っていた。目の前には黄色いカスタードをゼラチンで固めたものに、濃い茶色のソースがかかっている、所謂プリンというものがあった。そして隣には目を輝かせるコヨーテと、にこやかに礼を言うイクトミ。レイヴンは頭を抱えたかった。一体どうしてこうなった。

 事の始まりはナビィの部屋で行われた料理教室だったらしい。たまたま通りかかると小屋の庭ではクッキーが踊り、部屋の中から爆発音が轟いていた。何事かとレイヴン達がナビィの部屋に入ると、部屋の中の惨状はなかなかのものだった。飛び散ったシェパーズパイ、クッキーやチョコレートのモンスター、それらと戦う女性神達。部屋の隅に逃げていたナビィがレイヴン達に気がつかなければ、彼らは何が何だか分からぬままに戦闘に参加していたことだろう。
 ナビィ曰く。お料理教室の日だったのだが、クッキーがモンスターになり、シェパーズパイが爆発したらしい。レイヴンはそれを聞いて思考が停止した。コヨーテは楽しそうにお菓子のモンスターを壊していき、イクトミはワアと遠い目をして向かってきたモンスターの攻撃を叩き落としていた。
 かくして。どうにかお菓子のモンスターを討伐し終えた三人は女性神達からお礼にまともなプリンをいただいたのだった。
 めでたし。めでたし。

「めでたく無い。」
「どうしたんだ? レイヴンは食べないのか? 」
「ん? いらないなら俺が食ってやろうじゃないの。」
「や、やらん! 食べるからな! 」
 不思議そうなコヨーテとニヤニヤしているイクトミからレイヴンは顔を逸らし、プリンに向き合った。
 ふるふる揺れるプリンにレイヴンが何故躊躇しているのか。それは単に、女性からの贈り物だからであった。
「単純に恥ずかしいんだろ? 」
「うるさい! 」
「あー、レイヴン あんまり貰い物とかしないもんな! 」
「うるさい!! 」
 レイヴンは顔を手で覆うことを何とか我慢し、耳を染めてスプーンを手に取った。そしてゆっくりと一口分のプリンを掬い、口に運んだ。
「……美味い。」
「な! うまいよな! 」
「うるさい。俺はただ何か変な味がするかもしれないと思って警戒していたんだ。」
「成功したやつだってナビィたちが言ってたじゃねえか。」
「う、……まあ、そうだが。」
 にこにこと笑うコヨーテと楽しそうながらも仕方なさそうに笑うイクトミに、レイヴンは気まずくなったのか、無言でプリンを食べ進めたのだった。

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