コリコリと木の実を砕く。魔法に使う材料となるそれはわりと身近にあるもので、練習には最適だろうといつも使っている。
からから、と扉のベルが鳴って誰かが訪ねてきた。冒険者かなと思ってそちらを見ると、プフリが静かに立っていた。気だるげなその姿勢に、面倒ならこっちから行くのにと思いながらどうしたのと聞く。
「別に」
プフリはただそれだけ言うとすたすたと室内に入り、暖炉から1番遠い壁にもたれかかる。私はどうしようかと思案する。そしてヨウルトルットウでも渡そうかと台所へ向かう。昨日作ったものがあるはずだ。
台所へ行くと目的のものはすぐに手に入った。焦げていないものを慎重に選んで、冷たいミルクと共にトレーに乗せて運んだ。
プフリはさっきと同じ場所で立っていた。
「プフリ、これ」
「…それ、どうしたの」
プフリのジトリとした目に私は答える。
「冒険者にもらったんじゃないからね、私が作ったの」
「へえ…ロウヒが」
そう言うとプフリはヨウルトルットウに手を伸ばした。手に取ると口に運び、さくりと食べた。
「まあ、ロウヒにしては上手く出来たんじゃない」
「なによその言い方。そりゃ失敗することもあるけど…」
そう言いつつ、心が少しだけ温かくなる。言い方はキツいけれど、それはプフリなりの褒め言葉だと、知っているから。
「なにニヤニヤしてるの」
「秘密!」
私は上機嫌に笑った。
分かりにくいきみ
(私はよく知ってるの)