生命の泡/SFファンタジー系謎パラレル/黒バス3年組中心
!グロテスクな表現にご注意ください!



 まわるまわる巨大歯車。蒸気機関の竜はキング・ドラゴンの導きの元に動く。しかしすべては電脳の中、現実世界と交差する電脳世界で、少年達は戦っていた。
「あ、そんな」
 しまったと、少年が目を見開く。蒸気機関の竜が彼の腹を裂いた。飛び散る臓物。これは電脳であって、現実でもある。不思議な世界。
「今吉ッ! 」
− 反応がありません
「そんな、なんで! 」
− 反応がありません
「修正プログラムは、小堀! 」
「今やってる! 」
− 反応がありません
「ダメだ、福井! サポートをお願い! 」
「すぐやる! 」
− 反応がありません
− 反応がありません
− error
− error error error error error

 こぷり、血が溢れた。血が、流れ、流れ、流れて動く。血が円を書く。膨大な数字を書いていく。それはこの不可思議な電脳世界における最古の魔法陣(プログラム)。最初で最後の、竜召喚術。

− 生命の泡 プログラム 発動

 ああこれは、うたかたの夢なんだ。



………


 ぱちり、笠松は目を開いた。そこはいつもの体育館で、皆が部活に励んでいた。笠松僅かに眉をひそめてから、不思議そうに首をひねり、まあいいかと号令を出した。
「5分休憩にする! 」

 部活後、いつものように携帯を見れば仲の良い仲間達がSNSで交流していた。その賑やかな様子に笑みをこぼし、黄瀬が話しかけてくる。
「いいことでもあったんスか? 」
 どうだろうか。笠松は少し考える。いつもの日常、変わらない日々。その中で皆が楽しそうにしている。いいこと、というほど特別な事は何もなかった。
「普段通りだな」
 そう伝えれば、黄瀬はそうッスかと不思議そうにしながら俺はここでと分かれ道を別れた。その背中が遠ざかるのを見届けると、後ろから駆け寄ってくる足音に笠松が振り返った。それは森山と小堀だった。
 二人は一緒に帰ろうと提案し、携帯を開く。SNSでは福井達がこの休みを利用して集まりに出られる書かれていた。明日から夏休みで、俺たちはとある学校のイベントに参加することになっている。
「ドラゴンの学園だっけ? 」
「違うよ。竜王学園」
 その言葉に少し引っ掛かりを覚えたが、すぐに思い出した。東京の郊外にある竜王学園で俺たちはサマースクールのプログラムに参加することになっている。バスケを通じて出会った同学年の仲間達も揃って抽選に受かり、喜びあったのは記憶に新しい。倍率がとんでもない数字だったので全員揃って行けることになったのは奇跡とも言えるだろう。
「クラスは決めた? 」
「みんな一緒にガーネットだろ」
 竜王学園では宝石名でクラス分けされている。ガーネット(赤)、シトリン(黄)、ターコイズ(青)だ。それぞれに紋章があり、クラスカラーにもなっている。
「楽しみだね」
 小堀が言うのと森山が大きく頷いた。俺も頷き、楽しみだと笑った。

 今日の晩、俺たちは竜王学園へ向かうことになる。



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