02.自然に荷物は彼の元に/宮→今/騎士の宮地さんと王子の今吉さん


 城では今日もいつも通りの日々が繰り広げられている。その毎日に嫌気がさすなんて、いつもの事。
 そんな退屈を持て余していたワシに、馴染みの騎士の宮地はナイショ話みたいに告げるのだ。
「少し外出するか?」
 射した日差しを浴びた蜂蜜色の髪を揺らし、目を細めて、いたずらっ子みたいに笑っていた。

 城下は今日も賑やかだ。比較的小さな街だが、城壁に囲まれた要塞でもある治安の良い街はよく発展している方だと思う。
 晴天の下、露店が広がる大通りに出ると飴細工の屋台を見つけて、ひょこりと近づけば、宮地がお前って甘いもの好きだったかと首を傾げる。
「特別好きなわけやないけど、嫌いやないで」
「ふうん」
 屋台の主人に銅貨を渡して幸運の運び手とされるカーバンクルの姿をした飴を買う。妹へのお土産だ。主人はいたずらっ子みたいにウインクをして、お忍びだねと言った。
「一応変装してるんやから黙っといてなー」
 分かってるさと主人は笑い、宮地にしっかりお守りよと激励の言葉をかけていた。宮地は当たり前だろと少し不機嫌顔になっていて、ワシは少し笑ってしまった。

 ほな、次はどこへ行こうか。そう言ってふらりと辺りを見回すと、ひょいと飴細工の入った小袋を宮地が取ってしまう。どうしたのかと目を丸くしたら、荷物は俺が持つと目を逸らして呟くので、ワシは思わず笑い声を上げた。
「ほんならお願いしようかなあ」
「笑うな」
「いや、あんまり自然に持ってくモンやから」
 昔はワシに対してもっとおっかなびっくりだったのに、成長したなあと。そう言えば、むすっとした顔で同い年なのに昔も何もあるかと言われた。
 それでも、ワシは最初に宮地と出会った10年前を鮮やかに覚えている。

___え、あ、おれは、えっと此度は
___んー、分かっとるよ。新しい騎士さんやろ?
___は、はい!
___名前はなんて言うん?
___宮地清志です!
___ほな、宮地、これからよろしゅうな
___はい!

「あの頃はワシよりちっこくて可愛かったんに、今ではこんなに大きくなって」
「親戚のおばさんみたいだぞ」
「わはっ、ワシにそんなこと言うの宮地くらいやで〜」
「そうか?」
「おばさん、はなあ」
 ワシは男やしと笑みを浮かべれば、それはそうだけどと口籠りだしたので、さっさと次の店を見に行くでとワシは宮地の腕を掴んで歩き出したのだった。

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