宮→←今/流星群
!3年組さんが仲良し設定です!



 すきだよって言えたらよかったのにね。

 小さな光、一筋。流れ星が流れた。いつものメンバーでプラネタリウムを見た数日後。星空観測をしてみようかと星を見に来たものの、川沿いの道とはいえ集まれたのは街の中。そんな光が多い中なので、双眼鏡での星空観測となった。双眼鏡は大坪と笠松が合わせて五つ持ってきただけだったので二人から三人でひとつの双眼鏡を使う。そしていつの間にかワシは宮地と二人チームになっていた。若干名の作為を感じながらも、宮地の隣で双眼鏡を覗く。そして最初に戻る。流れ星が流れたのだ。
 あ、と小さく反応するとすぐに宮地も反応する。肉眼でも見えたのかと双眼鏡を離せば、ほらと指差していた。どこだろうと空を見上げると、また一筋。流星群なんて来てたかと不思議そうな仲間たちの声がした。ワシも似たようなことを考えていたが、それよりも隣に居る宮地に意識がいってしまいそうになる。だから、なるべく気にしないように、偶然同じ双眼鏡を使うことになっただけだからと言い聞かせてまた双眼鏡を覗き込んだ。けれど、ひょいと双眼鏡を取り上げられる。誰かなんてすぐにわかった。隣の宮地を見上げれば、交代だって言われた。
 宮地が双眼鏡を覗き込む。けれど度が合わないからすぐに目から離した。やっぱお前が使えって言われて、度を合わせればいいのにと笑ってやれば宮地は自分は目がいいからと意地悪そうに笑った。
「ひっどいなあ」
「貸してやるつってんだからおとなしく受け取れっての。うだうだ言ってると轢くぞ」
「おお、こわ」
 それじゃあ有難く受け取りましたとワシはまた双眼鏡を覗き込んだ。きらりと星が見える。しかしそれほど広範囲はみえないから、また流れ星が流れても分からないだろう。目を休めようと双眼鏡を離して瞬きをすると、おいと肩を引かれた。
「っは? 」
「流れ星」
 夜空を見上げれば、また流れ星が流れた。また次、次と流れ星が流れる。流星群だ、と誰ともなく呟いた。
 そういえばナントカ流星群が近いってプラネタリウムで言ってたな、そんな風に宮地が囁く。意図していないだろうが、その声が耳元からするものだからワシは今にも破裂しそうな心臓を抑えようと必死になって流星群を目で追った。
 きらきら、きらきら。星々が落ちていく。宮地のわずかな息遣いがしそうだ。そもそもなんで肩を抱き寄せたままなんだと逆ギレしそうになるが、抑え込む。顔が熱い。赤いだろうが、皆が空を見上げているこの瞬間なら誰にも知られないだろう。
 でも、と流星群の下で考える。
(今この瞬間が、終わらなければ)
 そうすれば宮地とずっと一緒に居られるのかと考えてしまう。
 いつから好きだったかなんて分からないが、それでも長いこと片想いを続けてきた。捨てようにも捨てられなかった恋心はもう叶うことを諦めているのに、こんな風に一瞬でも宮地がワシを特別扱いするような、そんな勘違いをするようなことをされるとワシの恋心がほんのり色づいて浮上してしまうのだ。
 アホだなと目が潤む。すると指先がワシの目を掠めた。驚いてその指の主である宮地を見れば、彼はワシを見ていた。
「何泣いてんだ」
 そうして不機嫌そうな顔をするから、ワシはまた勘違いをしてしまいそうになる。それでも平常心を装って、言うのだ。
「ちょーっと感動しただけや」
 そうして空を見上げれば、宮地はお前でも感動するんだななんて笑うから、ひっどいなと笑って見せた。

 きらきら、しゅ、しゅ。片想いだけど、好いた人の隣で見た流星群は、今までの何よりも特別なような気がした。

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