初日・所有者紹介編


 そう話していると次のバスがやって来た。秀徳と霧崎だ。そういえば何故霧崎が呼ばれたのだろうと思っていると、今吉が理由を教えてくれた。
「霧崎のスタメンの子らは全員がパートナー契約済の星座の力所有者で、怪物との戦闘成績が優秀やからな。ま、被害は大きいんやけど」
 戦闘成績が優秀とはつまり一般人の犠牲者が少ないということだ。そもそも星座の力所有者で構成された星座連合は一般人を守ることを第一の目的としている。そのために犠牲者を少なくすることを基本的な理念としており、その結果の戦闘成績というものになる。しかし戦闘成績が優秀とは犠牲者が少ないというだけであり、被害者や建物被害、土地や自然の被害が少ないというものではない。今吉が言ったのはそういうことだ。
「って、霧崎は今、五人しかいないよな」
「ああ、あそこは特殊で原と瀬戸がパートナー、花宮と山崎と古橋がパートナーなんよ」
「三人!?」
「そうそう。正確には花宮と山崎がパートナー、古橋と山崎がパートナーって具合やけど。つまり確か、花宮と古橋が王子で、山崎が姫やで。あいつらが星座連合が把握している最初の三人でのパートナー契約者や」
 俺が花宮と山崎と古橋を見ていると、今吉がため息気味に言った。
「ま、バスケ部でキセキ獲得校や誠凛と関わりがあるからお声がかかったんやろ」
 暗に可哀想だと告げられ、俺も同意する。まあ、あいつらがラフプレー集団であるかぎり、どんな思考を持っているかあまり分からないが。
「安心し。あの子らには事前に犠牲者も被害者も出すなってお願いしといたで」
 にっこりとした笑顔に、俺はため息しか出せなかった。嗚呼、霧崎ドンマイ。

 秀徳と霧崎も施設案内を受け取り、目を通して雑談に加わった。誠凛と嫌悪な空気になると思ったが、そうではなく、むしろ全員で木吉に謝りに行っていた。それを木吉と誠凛の仲間たちは笑って受け入れており、首を傾げる。そんな俺を見て、今吉は言った。
「あの子ら、ラフプレーやめたんやで」
「そうなのか?」
「木吉みたいな善良なバスケプレイヤーの大怪我の原因になるんは初めてだったらしくてな。あの子らにとってもバスケは好きなもので、戦闘を忘れられる大切な場所だった。ま、歪んだ愛やけど。で、そのバスケを同じ所有者が出来なくなるってことに心底落ち込んだらしゅうて」
「待った、木吉は所有者なのか?」
「せやで。双子座の王子で、パートナーは遠隔サポートが得意やから連れ込んかったらしい。回復も得意で木吉の怪我はその子が完治させたらしいわ」
「そうか……連れて来なかったなら、パートナーは防御が薄いのか?」
「星座の力の影響で、自分で転ぶことすら下手したら命取りなんやと。殆ど椅子に座ってネトゲしとるらしいで」
「ふーん。学校はどうしてるんだ」
「さあ。通信か、行っとらんか、そもそも学生とちゃうか分からんけど」

 そう話していると最後に洛山と陽泉が到着した。同じように施設案内を受け取って目を通すと赤司が集合をかけた。
 自然と学校ごとに集まって座ると、赤司が前に立つ。
「まず最初に、この合同合宿を止められなかったことを謝ります。すみませんでした」
 赤司が深く頭を下げると、俺たちはそれを見守った。でもそれは肯定したのではなく、理解しているということだ。赤司が顔を上げて説明を開始する。
「今回の肝要は皆さん知っていると思います。合同合宿の名を借りた実験です。期間は二泊三日となっていますが星座連合の指示で延びる可能性があります。その場合は学校や進学の負担にならないように星座連合からのサポートと、学習時間などを設ける処置を取ります。食事は此処の本館の食堂で取るようにしてください。体育館や本館二階のトレーニング施設、屋外コートなどの使用は誰でも良いので大人の監督に許可を得てからにしてください。 朝と夜に点呼をして各監督へ報告をしてください。なお、誠凛は陽泉の監督へ、霧崎は桐皇の監督へ報告をお願いします。また、簡単な娯楽施設が本館にありますので、その使用の際はフロントの施設の人に許可をもらってください。連絡は以上です。何か質問はありますか」
 その言葉でスッと緑間が手を上げる。赤司がどうぞと言うと、緑間は練習について聞いた。赤司はそういえばと苦笑して口を開く。
「練習については一応合宿なので、いつもの合宿と考えてください。自由時間にストバスをやるのもいいですが、休む時はくれぐれもきちんと休んでください。」
「分かったのだよ」
「では他に質問は、無いですか。ではここからは提案になります。誠凛の監督である相田さんからの提案で、星座の力の所有者の紹介はどうかとのことです。反対者はいますか」
 手が上がらないのを見て、赤司は所有者は前に出るよう指示した。また、パートナー同士は隣に立つことを指示する。俺は立ち上がって前に出た。

 自己紹介が初まる。纏めると。
【パートナー】
双子座の王子黄瀬と双子座の姫諏佐
牡羊座の王子瀬戸と牡羊座の姫原
蟹座の王子緑間と蟹座の姫劉
蠍座の王子高尾と蠍座の姫降旗
乙女座の王子小金井と乙女座の姫実渕
射手座の王子赤司と射手座の姫水戸部
山羊座の王子花宮と山羊座の王子古橋と山羊座の姫山崎
双子座の王子木吉(パートナーは遠隔操作系で紙防御の為連れて来ていない)
【未契約者】
牡牛座の王子日向
水瓶座の王子相田
天秤座の王子紫原
双子座の姫今吉
獅子座の王子笠松
となっていた。海常桐皇陽泉秀徳洛山に二人づつ、霧崎に五人、そしてなんと誠凛に六人もいた。特に水戸部のパートナーについては誠凛の一部も把握していなかったらしく、一時騒然となった。もちろんその騒ぎを沈めたのは水戸部の親友である小金井の“ちゃんと仲良くパートナーやってるから大丈夫!”の一言で、その鶴の一声により全てが片付いた。というか小金井のパートナーも洛山(実渕)であり実は洛山と誠凛はかなり縁のある学校なのだろうか。縁といえば霧崎の縁が凄まじくみえるが、本人たちはまず互いがパートナーで、同じ学校に通おうと勉強したと聞いてなんだか不思議な気分になった。そして個人的に意外だったのは、さっき話した今吉と相田が俺と同じ未契約者だったことだ。どうやら今吉と相田は互いに知っていたらしく、軽く図られたのだった。

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