三年今/エマージェンシー!/風邪ネタ/50000hit記念お礼リクエスト企画の作品になります。春巻様リクエストありがとうございました!


 がちゃり、顔を出した今吉の目は潤み、口元にはマスクをしていた。その情報で諏佐は、嗚呼と納得した。
「早退の原因は風邪か」
「ゴホッ、まあ、そんなとこやから、部活は休むわ」
「声ガッサガサだぞ」
「これでも水分はとっとるわ」
「そうか」
 じゃあ移すとあかんからと、今吉は寮の扉を閉めた。残された諏佐は、そうかと何度か頷き、携帯を鞄から取り出すと、某SNSアプリを開いた。


………

【某SNSアプリ的何か】
【B三年】
スッサー:エマージェンシー!!エマージェンシー!!
笠松:うるせえ!って諏佐かよ
宮兄:うるせえ!!諏佐かよ!!
スッサー:お前ら時々似たキレ方するよな
ふくい:で、なんかあったのか?
岡:部活始まるぞ?
大坪:宮地と木村は早く着がえてくれ
木村に野菜を聞かないでください:スリープモードにすればいいのか?
ふくい:待った木村?木村なのか?お前??
春日:紛れもなく木村だよ〜ん
木村に野菜を聞かないでください:すまん。名前を変える操作がわからん
ふくい:春日の所為か!!!
スッサー:エマージェンシーだつってんだろ聞け(^^#)
笠松:いやマジでどうした?
岡:珍しくキレとるのう
スッサー:今吉が風邪ひいた
ふくい:  
ふくい:はあ?!?!
ふくい:部活早めに切り上げて桐皇行くぞアゴリラ
春日:今吉ガチ勢こわ〜
春日:まあ俺も行くけど〜
坪:秀徳は遅くなる
木村に野菜を聞かないでください:今日ちょっといつもと違うことするからよ
宮兄:でも他県組よりは早いだろ
もりたか:笠松がいきなり部活を早めに切り上げるとかいうから何事かと思ったら、これは早く切り上げねば
小堀:簡単なごはんなら作れるよ。どうせ今吉はまた寝込んでて動けないんでしょ?
スッサー:お前らの反応が期待通りで圧倒的感謝
スッサー:うちは今吉がいないとさっぱりまとまらないから全員自主練にしといた
スッサー:そして俺は監督から今吉の看病をすると伝えると看病してきてくれと言われたので今吉の部屋の前だ。
笠松:いや買い出し行け
スッサー:一人にできないだろ!!
春日:こっちも今吉ガチ勢か〜
まゆまゆだぞ★:わたしまゆまゆ、今東京駅にいるの
宮兄:お前の行動力に一番驚いたわ!!赤司はどうした
まゆまゆだぞ★:その赤司がどうせ練習に身が入らないなら見舞いにいけと言われた
坪:なるほど
木村に野菜を聞かないでください:そろそろミーティングするから秀徳勢は体育館に来い。一二年がざわついてるぜ。
まゆまゆだぞ★:木村、お前、木村なのか…?!
木村に野菜を聞かないでください:それ二回目だから聞かなかったことにするわついでに後で直してくれ
まゆまゆだぞ★:頭を?
木村に野菜を聞かないでください:なんでそうなる???
スッサー:とりあえず今吉に挨拶して荷物自室に置いて、財布持って買い出しに行くわ。誰か必要なもの教えてくれださい


………

 そうして諏佐が買い出しから戻ると今吉の部屋から海常組と陽泉組の声が聞こえてきた。どちらも他県じゃなかったかと諏佐はぼやきながら今吉の部屋に入った。
「あ、諏佐だ」
「小堀、多分これで間違い無いと思うんだが」
「えっと、多分全部揃ってると思う。レシート後で見せてね、割り勘しなきゃ」
「そうだな」
「諏佐、とりあえず濡れタオルで頭冷やしてたんだけど冷えピタあるか?」
「笠松が言ってやつかは分からないが、あったやつ買ってきたぞ」
「お、これだ。サンキュ」
 笠松は諏佐が買ってきた品物の中から冷えピタを取り出すと小走りで今吉の元に向かった。その今吉は寝かせられているらしく、体温計を福井が抜き取ると高熱ではないやろとぼやいていた。しかし福井は体温計の数値を見て頭を抱える。
「ギリ市販薬で治せる、か?」
「まじでか」
 結構な熱じゃんと森山が慌てる。小堀はその間にお粥とスポドリを用意していた。
「流石にお粥を一から作るとなると時間かかるから、レトルトが売ってて良かったよ」
 その時、がちゃんと扉が開いて秀徳組と黛と春日がやって来た。他県組が早すぎないかとぼやいたのは諏佐だった。
「今吉は平気か?!」
「風邪大丈夫か? あ、そういや黛に名前直してもらったぜ」
「宮地も木村も早く靴脱いでくれ。後ろが詰まってるぞ」
「いや、俺は慣れてるからな」
「慣れて良いものでもないだろう」
 がやがやと今吉の小さな部屋にいつもの面子が揃った。とりあえず出来上がったお粥とスポドリを黛と宮地が運ぶ。その間に木村が皆の夕飯となるチャーハンを調理し始め、大坪はそれのサポートをした。笠松がお粥を受け取り、宮地と諏佐で今吉が起き上がるのを手伝う。いやなにこれ介護なんか、とは今吉の談である。
 起き上がってもどこかぼんやりした今吉に笠松がレンゲでお粥を食べさせる。その姿に俺もやりたいと福井がはしゃいだが、岡村に落ち着けと宥められていた。
「もういい、ゴホッ、から」
「半分も食えてねえぞ」
「半分も食べれれば上々じゃない?」
「あ、そうだな」
 福井が熱高かったしと言えば、笠松は納得し、代わりにスポドリをちゃんと飲めよと言った。その後ろでは春日が薬はこれだよと風邪を治す為の市販薬とコップに入った水を持っていた。
 今吉は薬を飲むと、きみらなと声を出した。
「つかきみらな、ゴホッ」
「あ、喋るの辛いよね?! とりあえず安静に」
「ちょ、すまん、ゴホッ、森山うるさい」
「ごめんね黙るね!!」
 とりあえず、と今吉はいつもの面々を見渡してから、長い溜息を吐いた。
「風邪、うつったらあかんから帰れや、ゴホッ」
「いやそんな状態の今吉を放置しておけねえよ」
「夜は俺がついてるからな」
「諏佐も出てってほしいんやけど……」
「皆ギリギリまでいるから安心しろ」
「いや、安心とかやなくて、ゴホッ」
 大丈夫だ、と黛は頷いた。
「俺は赤司に今吉が治るまで部活に来るなと言われている」
「ゴホッ、は、赤司なにしとんの?!」
 流石は赤司と納得する面々に、今吉ははあと長い長い溜息を吐いた。
「これだからアホは」
「アホじゃない。心配してんだよ」
 宮地がそう言ったところで、簡易キッチンから木村が顔を出し、飯出来だぞと皆に声をかけたのだった。

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