三日目・契約祝い編


 今吉達と共に赤司の元へ向かい、森山と相田さんの契約祝いの件を話すと、それならこちらも考えていましたと微笑まれた。
「朝食の席で祝いの会を行おうと思うのですが」
「ええんとちゃう? 本人らには秘密にしとこか」
「そうですね」
 サプライズッスねとはしゃぐ黄瀬に、諏佐がそうだなと微笑ましそうに頷く。相変わらず仲が良いのが羨ましいと思っていると、ふと今吉が口を開いた。
「そういや、怪物の襲撃やけど。やっぱり数が多いなあ」
「はい。やはり、能力者に引き寄せられる性質を持つようですね」
「ったく、ワシらは誘蛾灯ってわけかいな」
 腹立つわとため息を吐く今吉に、赤司は苦笑する。その背後で、もそりと誰かがやって来たかと思うと実渕だった。
「あら、皆さん。おはようございます」
「おはようさん」
 俺もおはようと挨拶し、何か作戦会議かしらと微笑む実渕に赤司が祝いの会の事を話すとそれはいいわねと目を輝かせた。
「やっぱり運命の相手に出会えたのは奇跡だもの。祝ってあげなくちゃ」
 たとえ、この先に戦い続ける修羅の道しかなくとも、今だけは、と笑った実渕に、俺はそうだなと頷いた。今吉もまた、せやなあと笑っていた。

 洛山の木蓮館から離れ、それぞれの分館へと戻る。別れ際、今吉と離れることを少し名残惜しく思っていると、どうしたんと笑われてしまった。その様子から、サトられているわけではないと分かり、まだ自分には余裕があるなと安心した。

 朝食の席は賑やかな祝賀会となった。森山はどっちかというと王子が良かったとぼやき、相田さんに、私が守ってあげますからと斜め上の反応をもらっていた。しかし森山はありがとうと照れていたので案外斜め上でもないらしかった。なんというか、それでいいのか。

 賑やかなパーティの中、今吉の元に花宮が駆け寄り、何か言葉を交わすと会場から出て行った。何かあったかと今吉の元へ向かえば、ああ笠松かと今吉は教えてくれた。
「怪物が外に出たらしくてな、霧崎の瀬戸と原が足止めしとるらしい。んで、今、花宮達が片付けに行ったらしいわ」
「花宮達と言うと、三人で契約しているっていう」
「それや。あと木吉も行ったらしいで」
 ワシらは邪魔になるからここで待機なと言われてしまい、俺はそうかと返事をした。ぶっちゃけ、三人で契約している星座の力所有者達がどうやって戦うのか興味があったのだが、確かに未契約者である俺達は邪魔にしかならない。
 でも、やっぱり気になると思っていると、しゃあないなあと今吉がくつくつ笑った。
「ほんなら少しだけ覗きに行こか」
 ワシは契約者みたいなモンやしと俺の腕を持って会場の出口へと向かった。


 外に出た途端、何かが煌めいた。原の周りに鏡が多く展開され、何やら特殊効果を怪物に発動している。近距離で大きな岩で出来た亀のような怪物に攻撃を叩き込むのは瀬戸の短刀と木吉のハンマーだ。その数歩後ろから花宮がハルバルトを振りかぶり、さらに遠くから古橋のチャクラムが怪物を斬りつける。その際、古橋が浮いていることに気がつくと戦場の後ろで山崎が宝珠を手に浮かせて集中しているのが見て取れた。どうやら原は怪物にデバフを付与し、山崎が重力操作で王子達をサポートしているらしかった。デバフ、バフの数が少ないものの、それよりも手数が多く、重力操作による攻撃チャンスも格段に多い。これは強い筈だと舌をまけば、ワシの後輩は凄いやろと今吉が笑った。いや、お前の後輩なのは花宮だけだろうが。
「戦況も良いっぽいし、ワシらはパーティに戻ろか」
「おう」
 俺はそう言って、これ以上俺達が戦場にいることでヘイトを集めてしまわぬように、そそくさとパーティ会場へ戻ったのだった。

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