アイを追放せよ/黛今/3年組が仲良し設定です/アイ=純愛
タイトルはシングルリアリスト様からお借りしました
!ちょっぴりグロテスクです!



 何の前触れもなく、彼はワシの涙をべろりと舐めた。その瞬間、ワシは思うのだ。嗚呼、この人になら目をあげてもいいかもしれない、何て。

 始まりはいつだったか。いつものように色んな学校のバスケ部の三年生が集まって、適当にストバスしたり、マジバでハンバーガー食べたりしていた時だろうか。隣にはいつの間にか黛がいて、ワシは驚きながらもポーカーフェイスで対応した。それが、初めてまともに二人で喋った時だろう。
 その時に、きっと何かが彼の琴線に触れたのだろう。あれから、黛はいつも気がつくとワシの隣にいた。そうしたらいつの間にか皆が自然とワシの隣には黛がいると思い始めて、ワシは一人、何が起きているのかと不思議に思った。
「好きだ」
 そう告白されたのは冬のこと。全てが片付いて、受験に集中するからとしばらく集まりも無いだろうという話がSNSで纏まった時、急に電話をかけてきて、一方的にそう言い放った。
 あんなあ、それはあんまりやないか。とワシが言えば、お前なら知ってると思ってたと僅かな驚きを声に乗せて彼は告げた。買いかぶりすぎだと言えば、彼はそんな事はないと言った。
「お前は優しいやつだから」
 考えておいてくれと、受験生にとって酷なことを告げて、彼はまた一方的に電話を切った。

 それから、春。様々なことが片付いて、また会おうと誰かがSNSで声をかけた。そうするとあの時の仲間たちの全員が反応したので、皆で笑いあった。
 かくして日曜日に皆で会った。そこには黛もいて、まだ告白の返事をしていないから気まずいと思っていると、つかつかと彼が近づいて来た。だけど、皆はそれに気がつかなくて。
(あれ?)
 どうして黛のことがこんなにも見えるんだろうって訳のからないことを考えた。でも、だって、黛は影が薄くて、気がつかれ難くて。
「好きだ」
 ハッキリと、彼は言った。そうして、ワシの頬に手を当ててぐいと引き寄せて、べろりとワシの頬を舐めた。そこでようやくワシは自分の涙腺が緩んでいたことを知った。そしてふと、彼になら、もし、このまま目を食べられたって構わないと思った。
 嗚呼、嗚呼、それを人は何と呼ぶのだろう。
「お前も俺が好きなんだろ」
 一方的な言葉。だけどその言葉に納得してしまってから、ワシはハハと笑った。
「仕方ない奴やなあ」
 我が道を行く、ゴーイングマイウェイ、唯我独尊。でも、そんな君が嫌いじゃなくて。
 ワシは笑って、彼の手に手を重ねたのだった。

- ナノ -