1年コーディネーター科首席
自分の寮に戻って片付けをし終え、共同スペースの片付けをしようとしていた頃にチェレンが帰ってきた。その首には赤いネクタイ。無事学部変更が出来たらしい。
「俺の部屋はこっち、だね。共同スペースの片付けを任せていい?」
「勿論。」
「そういえばクラス割は明日発表だったよな」
「そうだね。俺は三人と学部が違うからクラスは違うんだろうな」
「間違いないね。じゃあ片付けるよ。そっちよろしく」
「任せろ」
チェレンは俺の返事に満足して自室に荷物を運び込んでいた。さて、俺は共同スペースの片付けだ。
………
夕飯時になり、食堂に向かう。食堂は男女共用なので、トウコとベルにメールで会う約束をしていた。
「トウコ達は、と」
「あれじゃないか?」
「あ、本当だ。」
俺たちが気がつくとあちらもこちらに気がついたらしく、ベルが大きく手を振って走ろうとしていた。それをチェレンが少しだけ声を張り上げて止める。そしてお互いに近寄った。
「トウヤ達は片付け終わった?」
「なんとかね」
「皆すごいなあ。わたしはまだまだだよお」
「ベルは荷物が多いのよ。」
「あれでも減らさせたんだけどね」
「チェレン管轄(かんかつ)だったんだ」
トウコが笑いながら言い、クスクスと俺が笑うと、ベルは決まり悪そうにして話題を変えようと口を開いた。
「は、早くごはん食べよお!」
「ったく、そうしようか」
「じゃあアタシは担々麺にしようかなー」
「俺は八宝菜にしよ」
ワイワイと決めて食券を買い、食事を受け取ってから席を決めようと周りを見渡すと女子生徒がこちらに手を振っていた。
「トウコちゃーん」
「あ、ハルカちゃん!」
トウコに続いて俺たちはハルカという女子に近寄る。八人掛けのテーブルセットには隣部屋のユウキ君とミツル君も居た。
「あ、ユウキ君にミツル君」
「やあトウヤ君。」
「そっかミツル君に過保護なハルカって人は」
「そうですよ」
ミツル君の肯定の返事に、やっぱりと言うとベルが知り合いなの?と言った。
「寮の隣部屋に住んでるんだよ」
「へえー!」
「そうか、なら僕の隣部屋の人でもあるんだね。僕はチェレン、よろしく」
「僕はユウキだよ、こちらこそよろしく」
「僕はミツルです。よろしくお願いします」
俺たちが挨拶を終えると、ハルカちゃんがぐいっとこちらに話しかけてくる。
「ねえねえキミがトウヤでキミがチェレンだよね?アタシはハルカ!よろしく!」
「よろしく」
「ハルカちゃんはコーディネーター科の1年首席なんだよお!」
「ええっ!」
俺がそう驚くと、ハルカさんはニコニコとしながらあまり気にしないでと言っていた。しかし首席というのを気にしないでいるのは無理だろう。コーディネーター科1年に限定したとしてもこの正海刻学園というエリートマンモス校の首席なのだ。驚かない訳がないし、気にしないでいられる訳がない。
「すごい…」
「皆と同じ様に接してくれると嬉しいな」
「努力する」
「僕も努力しよう」
「じゃあ皆座りなよ。」
「一緒に食べましょう」
ユウキ君とミツル君に言われ、俺たちはハルカさん達と同じテーブルで夕飯を食べたのだった。