勘違い



扉を開くとまず目に飛び込んできたのは共同スペースだった。簡易キッチンとテーブルにイス、その近くに食器棚、奥にバスルームの扉がある。広さは問題視するほど狭くなく、広くもない。俺は左右の扉のネームプレートを見て、チェレンの荷物をとりあえず共同スペースに置き、自分のネームプレートがかけられた扉を開いた。

「へえ…」

そこにはシンプルに建て付けのクローゼットや机、ベッドがおかれていた。広さは少し狭く感じるものの、一人部屋ならば至極普通な広さが確保されており、充分満足できるものだった。
荷物を白いシーツのベッドの上に置くと、チェレンの荷物を部屋に入れる為に自室を出た。その時、廊下から大声が聞こえ、思わず立ち止まる。

「だーかーら!俺の部屋だっての!」
「ひっ、いえ、あの、だから…」
「あーもう!おどおどすんな!」

揉めている内容を感じ取り、俺は呆れながら扉を開いた。

「あのー」
「なんだよ!」
「ひっ」
「部屋は相部屋ですよ、黄色い人」
「は?!」
「ひぃっ」
「そっちの人は怯えなくて大丈夫だから」
「す、すみません…」

緑のネクタイをした怯える人はおろおろとしていて、どうやら気が強くないらしい。それよりも対応すべきは黄色い人の方である。

「で、そっちの黄色い人。」
「俺は黄色い人じゃねえ!ジュンだ!」
「あーハイハイ。ジュン、1人部屋は首席と生徒会役員、あと委員会の委員長だけだから」
「そうなのか?!」
「そうだよ…それに部屋に入れば二人の個室があるし、ネームプレートもかかってるから」
「そんなん知るかよー」
「だからそっちの怯えてる人に怒鳴らないであげれば?」

黄色い人こと、赤いネクタイをした金髪のジュンは素直に怯えてる人に謝る。どうやら勘違いを指摘されれば素直に認められる人のようだ。いい人なのだろう、多分。



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