「…過ちならば、直さないといけません」
「無理です!美玲さんが出来なかったことを、沫早矢さんが出来る筈がない!」

ナビィの言葉に、沫早矢は冷静に受け答える。それはパニックになる人を見て冷静になる状況のそのままだった。

「でも、美玲さんが一人であった限り、可能性があります」
「…それは」
「皆の協力を得ようということだよ」
「そうすればきっと」
「そんなこと意味がありません!だって!神様(みなさん)は力を失ったのですよ!」

必死なナビィに、ヤマトタケルが落ち着いた声で話しかける。

「それでも、神が神である以上は、なんらかの支援が出来る筈さ」
「そんな…」

ナビィはぱたりと座り込む。その目には大粒の涙があった。

「書き換えは過ちなのに、どうして…」
「何故ナビィは過ちだと思うんですか」

沫早矢がそう聞くと、ナビィは堰を切ったように涙を零しながら口を動かした。

「っ、みれ、美玲さんが、亡くなったから、です」
「そうですか。なら、僕が亡くならなければ過ちにはなりません。僕は亡くならないと約束します」

清々しいほどに沫早矢が言い切ると、その隣でヤマトタケルがほんの少し笑った。そのことにナビィは気がつかずに嗚咽を漏らしながら言葉を紡ぐ。

「だから、沫早矢さんのやろうとしている書き換えは、過ちでないというのですかっ」
「はい」
「では、美玲さんは!無駄死にしたというのですか!」

それはナビィの本音だった。全ては建前で、その少女が間違いのために死んだのだと認めたくなかったのだ。
そんなナビィの本音に、沫早矢は首を左右に振って答える。

「そうじゃないです。ナビィさんも見た筈でしょう。美玲さんによって生まれた神様達の絆を」
「それはっ…」

黙り、涙を零すナビィに沫早矢は強い意思を込めて言う。

「ナビィさん、僕とヤマトタケル様と一緒に来てください。皆さんに協力を仰ぎましょう」

沫早矢はナビィに手を差し出して微笑んだ。ナビィはしばらくその手を眺めると、溢れた涙を両手で拭い、その手に手を重ねる。その姿を、ヤマトタケルは微笑ましく見ていたのだった。

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