「天使ナビィを探し出さなければならない」

トールの静かな言葉に、その場に集まっていた数人の神と沫早矢は黙り込んだ。天使ナビィは少女の書き換え時に唯一書き換えられなかった存在であり、少女の書き換えを目の前で見届けたたったひとつの存在だ。少女は周りが書き換えについて調べずとも、一人でその方法に辿り着いた。それは少女が天賦の才を持っていたからに他ならない。少女は誰に言われずとも、調べずとも、直感とわずかな資料で答えを出していたのだ。

「僕には天賦の才がありません」
「…わかっている」

そう言ったギルガメッシュは、眉を寄せてどうするかを考え込んでいるようだった。沫早矢に天賦の才がない以上、少女のように書き換えの方法に辿り着くことは不可能だろう。矢張り、天使ナビィが居なければ話が始まらないのだ。

「でも、天使ナビィは何処にいるのか、探し回った神は沢山いたけど」
「誰一人として見つけられなかった。」

太公望に続いてヤマトタケルが喋る。手がかりは殆ど無い。ただ、過去の文書を漁った何神かは、書き換えを行う場所について断片的にわかっていた。その一人がギルガメッシュだった。

「ヒャクカミの書き換えは、ヒャクカミの“中心部”で行われるらしい。」
「中心部とは?」
「ヒャクカミの中心部なんて何処なのか…」

疑問を浮かべる沫早矢に続いてクリシュナが戸惑うように呟いた。それに、ヤマトタケルが口を開いた。

「物理的な中心部ではない、じゃあないかな?」
「それは、」
「そっか!ヒャクカミが存在する上で重要な力の集まる場所とか!」
「ガネーシャ落ち着け」
「だってトール!」

頬を膨らますガネーシャに和む中、ギルガメッシュが口を開く。

「ヤマトタケルとガネーシャの言葉は合っている。中心は集中する所という意味で使ったからな」
「えへへ」
「しかしそれならば余計に分からないのではないか」

トールの言葉に、まさにその通りとギルガメッシュが頷く。力を失った神々は力の軌跡を辿るという容易いことすら出来無いのだ。

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