ヴァルキリーの手を引いて沫早矢が家の外に出る。そこには冒険者の輝きが沫早矢からだと分かった神々が揃っていた。
「沫早矢、冒険者の輝きは」
「クリシュナ様、先に皆さんに聞きたいことがあるんです」
「クリシュナ“様”だって?」
「僕は人間ですから。」
宣言するような沫早矢の言葉に、神々はわずかに歓喜した。沫早矢が“人間”である、それはつまり彼の未来を変えられるということだからだ。
その雰囲気の中で、沫早矢はヴァルキリーの手を引く。ヴァルキリーは顔を俯きがちに、ゆっくりと歩いて神々の前に立った。場は静まり返っていた。
「皆さん、皆さんに聞きたいことがあります。」
その声は集まった神々全員に行き渡る。
「皆さんはヴァルキリー様を恨みましたか?」
ヴァルキリーが沫早矢に引かれていない手を強く握りしめた。罵詈雑言が飛ぶだろう。
しかし、ヴァルキリーの予想に反して誰もが静まり返っていた。
「…?」
ヴァルキリーは疑問に思い、思わず顔を上げる。そして目を見開いた。
視界に入る全ての神が穏やかな表情を浮かべていたからだ。
「どうして…」
ヴァルキリーは戸惑う、そして分からないという恐怖を抱いた。神々の言いたいことが分からなかった。沫早矢が恐怖で震え出すヴァルキリーの手をしっかりと握りしめた。
「ヴァルキリー様、何も怖いことはないです」
「でも、どうして、」
戸惑いと恐怖を隠すことすら出来ずに、ヴァルキリーは一歩下がる。しかしそれをさせまいと沫早矢はヴァルキリーの手を強く握っていた。