「えー!アンタってヒャクカミで一回も人間に会ってないのか?!」
「はい」
沫早矢の言葉に驚くニューリッキ。傍らに居たアドニスも目を見開く。
「じゃあ初めて会ったのは」
「ジークフリートです」
「うっそだー!」
「嘘じゃないです」
「まあアンタが嘘つきには見えないけどさ…」
黙り込むアドニスに気がつかずに、ニューリッキと沫早矢は会話を続ける。
(人間がこちらに迷い込んだら、出会う筈なのはヒャクカミの人かナビィの筈なのに…)
「あ、だからジークフリートのところに世話になってんのか!」
「そうです」
「なるほどなーってアドニスどうした?」
「あ、いや…なんでもないよ、ニューリッキ」
「そうか?」
ニューリッキは少し不思議そうな顔をしてから沫早矢との会話を再開した。それを眺めながらアドニスはまた考える。それは偶然だったのだろうか、と。
(もし、偶然じゃないなら…)
アドニスの背中を嫌な汗が伝う。
(もし、それが必然なら…)
最も自分が危惧していたことが起こってしまった。沫早矢は自分たちに重大な隠し事をしている、と。
(いや、ただの偶然なのかもしれない)
アドニスはそう思いながらも誰かに相談することを心に決め、談笑を続ける二人の会話に混じるのだった。
花の仮想
(もしかして、)(沫早矢は)