実福+燭福/パフェ事変
※刀がたくさん出てくる。


 実休が目を凝らしている。福島はせっせと手を動かす。
「何してるの?」
「あ、光忠!」
「ねえ、二人とも、これなに?」
「多分メレンゲ焼いてるね」
「おや、おとうさまたちがそろったね」
 小豆がひょいと戻ってきたらしい。
「ぱふぇをつくってるよ」
「俺はエディブルフラワーを頼まれたんだ」
「僕は特に何もしてないよ」
「見れば分かる。全員、見れば分かるんだけど、なんでそれぞれそんな事をしてるのかってことだよ!」
「あるじにたのまれたんだよ?」
「なるほどね!」
 あの人また変なことを言い出したんだな。燭台切は察した。小豆はせっせとパフェに使う菓子を作っていく。福島は花を丁寧に洗い、選別していく。実休はオーブンの中を覗いたり、福島の手から花を貰ったり、小豆から氷菓を貰ったりしていた。いや実休さん何してるの。燭台切はツッコミたかったが、福島と小豆の作業効率は大して落ちていないようだ。実休が上手いのか、福島と小豆が驚異的なのか、どちらだ。
「ねえ、光忠。言いたいことは言ったほうがいいよ」
「あなたは自覚ある?」
「実休が何もしてない自覚はある」
「酷くない?」
「じっさい、なにもしてないだろうに」
「まあそうだね」
 のほほんと実休は笑っている。燭台切は、この笑顔で許してしまうんだよなと遠い目をした。小豆と福島はせっせと働いている。
 仕方ない。燭台切は実休を台所から引っ張り出して、パフェ用のグラスを磨くことにした。様々な形のグラスを取り寄せたらしく、すごいねえと言いながら二人でせっせと磨く。
 福島と小豆の作業は早い。さすがである。そうっと謙信と後家が台所に顔を出したので、そのまま小豆の手伝いに回る。なんならパフェ用のグラスを磨く作業に姫鶴が加わった。
「何だこの騒ぎは」
「大包平さんもグラス磨こう」
「構わんが、何だこれは」
「パフェ用のグラス」
「ぱふぇ……若いのが好きなやつか、雑誌で見かけたぞ」
「大包平さんは雑誌とか見るの?」
「いや主だ」
「何見てるのあの人」
「乱読するのはやめろと言っているんだが」
「そこ? あと遠目に見てる鶯丸さんたちも手伝って」
「バレたか」
「えっと、何すればいい感じ?」
 もうこうなれば誰でも手伝えばいいのだ。燭台切はてきぱきと指示を出した。

 かくして、全振りへのパフェが出来上がった。審神者の喜び方が凄かったと、小豆が苦笑していた。
 そうして燭台切と実休と福島もパフェを食べる。花びらをふわふわと食べながら、実休は首を傾げた。
「それで、どうしてこんな騒ぎになったの?」
「さあ?」
「考えるだけ無駄だよ。最初から一振りや二振りで出来る仕事じゃないんだから」
「それもそうだね」
「まあ、花について歌仙くんたちも参戦してくれて助かったかな」
 楽しかったと笑う福島に、実休がふふと笑う。燭台切は仕方のない人たちだと、息を吐いてからパフェの花びらを崩したのだった。

- ナノ -