タイトル:花咲く秋
ジャンル:クロスオーバー/名探偵コナン/原神
要素:事件、ミステリー風味の何か、不可思議、元素はある

※サクサク進めるためにほぼ会話文です。
※今回はおまけ無しです。

カーヴェ…建築デザイナー。休暇として一年前から日本に来ている。
メラック…万能スマホ。元素で動いてる。

江戸川コナン…小学生。名探偵。不可思議(元素も魔力も)を無効化する。
安室透…探偵。喫茶ポアロのアルバイト店員。公安。バーボン。降谷零。カーヴェは日本人。

アルハイゼン…FBIの非戦闘員。カーヴェは人間。探偵ではないが……?

毛利蘭…高校生
鈴木園子…高校生
世良真純…高校生。探偵。

毛利小五郎…探偵

灰原哀…小学生

鍾離…???
タルタリヤ…ファデュイ執行官

七神…ナヒーダはFBIと共にいる。ウェンティはドイツ在住。他は現在不明。どっかにいる。

魔女界…まじ快要素。カーヴェ母はイギリス魔女。

愛の種…カーヴェの性質と魔女の血と元素が噛み合ってしまった故の幻覚、幻想、催眠。探偵、神の目持ち、魔女には効きが悪い。名探偵には一切効かない。犯罪者、心の不安定な者の深層心理に巣食った光であり、闇。寵愛の呪い。庇護の呪い。それらの牙は全て、カーヴェへと向き、蝕み、しかし巡り巡ってカーヴェの益となる。なお、カーヴェに愛の種の意図は一切ないので認識に齟齬がある。


・・・


 夕暮れ。夜半への近道。
 たったか。人が走る。
 追いかけるのは、狼だろうか。
 日本に狼なんていただろうか。
 どさり、転ぶ。人は、這いずった。
「いやだ、やめろ、こないでくれ!」

「仕事だからごめんね」

 それはまるで、雪に花が咲くように。

 人は腰に"それ"をつけていた。


・・・


「あ、」
 カーヴェは目覚める。アルハイゼンが声をかけてきた。
「カーヴェ、そろそろ夕飯にするぞ」
「ごめん、寝てた」
「俺が作った。仕事の締め切りが重なっていたんだろう」
「うん。ほんと、凡ミスだよ。ああ、座ったまま寝ていたから体が痛いな」
「マッサージでもするか」
「いらない。適当にストレッチするよ……あれ、シチュー? きみが汁物なんて珍しいな」
「きみがクリームシチューを食べたいと言っていただろう」
「覚えてないな。でも、好物だよ」
「そうか。とりあえず席に着け」
「嫌だね。支度を手伝うよ」
 てきぱきと二人で夕飯の支度をして、食事とする。あれこれ話しながら、夕飯を食べ終える。
「あ、そうだ。アルハイゼン」
「何だ」
「愛の種がどこかで芽吹いた気がする」
「それはもっと早く言え」
 アルハイゼンは頭が痛いと米神を摩った。


・・・


『ええそうね。あなたたちにとても近いところで愛の種が芽吹いたわ。ふふ、カーヴェもなれたものね』
「クラクサナリデビ様、事態は悪化しているのでは?」
『そうかもしれない。けれど、確かにカーヴェは"しんか"しているわ。それは"わたくしたち"にとって喜ばしいことよ』
「ですが」
「あの、クラクサナリデビ様。カーヴェです。今回芽吹いた愛の種について教えていただけますか」
『かまわないわ。まず、愛の種は男性に宿った。けれど、今回の愛の種は宿主を次々と変えているわ。そのなかでも、"彼"を経由したことでカーヴェにとっても探知できたのかも』
「彼とは」
『公子タルタリヤ』
「っ」
『彼を一度経由しているみたい。その時にカーヴェが愛の種の芽吹きに気がついたの。公子とは会っているでしょう?』
「彼の愛の種は回収しました」
『ええ、カーヴェと公子には少しだけ繋がりがあるままなの。時間の経過で薄れて行くものよ。今回は、事態が早すぎたわね』
「クラクサナリデビ様。では今回の愛の種は伝染型と?」
『本体は一つだけよ。痕跡を残していく、感染、伝染とすこしにてるけれど違うものね。とにかく、本体を何とかしないといけないわね』
「僕が回収します」
『そう。今回は何としてでも愛の種を回収しなくては、事態が終わらないと思うわ。どうか解決してちょうだい。わたくしの民たち』
「はい」
「分かりました」


・・・


 降谷はトントンと指先でスマホを叩く。暗い部屋の中、困ったなと考える。
「連続殺人事件、被害者は全て異常な扱いをされている」
 愉快型、劇場型、計画性、衝動的、分からない。
 ただ、被害者には、殺され方以外に、統一感がない。
 何のために殺されているのか。
「妙だな」
 降谷は、バーボンとして、この件に介入せねばならない。
「罠に嵌るか」
 情報が足りない。


・・・


 被害者は三人となり、警察は捜査本部を……

「怖いね」
 蘭がテレビを見ながら言う。小五郎は、酒を飲みつつも口数が少ない。コナンはうんと相槌を打った。蘭はまた言う。
「怖いな……」
「じきに捕まるだろ」
「でも、お父さん、」
「ねえ、蘭ねーちゃん、明日早いんだよね?」
「あ、そうだった! 早くに家を出るから、早くお風呂に入るね」
 たったかと入浴に向かった蘭に、小五郎は晩酌を進めた。コナンはニュースをぼんやりと見る。

 警察は連続殺人の可能性があると……

「ガキ、怖いならニュースを見るな」
「怖くないよ!」
「箸が止まってる」
「あ、あはは」
 コナンはいそいそと夕飯を食べた。


・・・


 蘭は早朝から家を出る。こつこつと進むと、世良と園子がいた。園子が日直であり、世良と蘭が付き添うことになったのだ。
「最近、連続殺人事件が起きてるんだって?」
「あ、世良ちゃんもニュース見たんだ? あたしも見たわ。本当、怖いもんね」
「私も見たよ。とても怖いね」
「連続殺人事件はボクのところに話が来ないだろうなあ。巻き込まれたら別だけど」
「やだ、冗談がきついわよ」
「はは、そうだね」


・・・


 喫茶ポアロ。安室は休みらしい。梓に追加のハムサンドを頼み、カーヴェはコーヒーを飲む。アルハイゼンもコーヒーを飲んでいた。
「クラクサナリデビ様はここも気をつけろって言ってたな」
「余計なことを言うな」
「分かってるよ」
「よお、」
 カーヴェがあれと振り返る。毛利小五郎がいた。
「カーヴェと、アルハイゼンか。俺は毛利小五郎だ」
「アルハイゼンだ。毛利探偵だな。カーヴェから話は聞いている」
「すみません、こいつはいつもこうで」
「構わねえよ。ったく、新聞もニュースも連続殺人だのなんだのと」
「それで機嫌が悪いんですね」
「俺から言わせれば、そもそも犯人が違うだろ」
「は?」
 カーヴェがポカンとする。小五郎は突飛な話だが、と言う。
「指示役と実行役がいる。そんな感じがすんだよ」
「それこそ動機が分からなくなりませんか」
「それを俺も考えてんだ。まあ、警察に相談されたわけでもないから、傍観しているがな」
「そうでしたか」
「時に、毛利探偵」
「なんだよ」
「あなたが言いたいのはこうだ。カーヴェはこの件に関わるな、と」
「そうだな」
「えっ」
「ただでさえ、名探偵が食いつきそうな話だ。名探偵の兄のようなカーヴェがその優秀な能力で協力してもおかしくない。毛利探偵はカーヴェを慈しんでいる。遠ざけたくもなるだろう」
「そんな回りくどいこと、」
「合ってる。カーヴェ、いいか、関わるな。カーヴェが傷付いたら、どれだけの人が苦しむか、分かるか」
「でも、そんなこと言われても、」
「優しさは常に毒を孕む。善意がすべて薬とは限らない。いいか、関わるな」
「……約束できません」
「何でだ」
「僕も、やるべきことがあるんです」
 カーヴェの真っ直ぐな目に、小五郎はああもうと息を吐いた。
「ったく、お前はずっと頑固だな」


・・・


「はじめまして、安室といいます」
「うむ。鍾離という」
「ええと、ご依頼は」
「近頃の連続殺人について調べている者たちを教えて欲しい」
「えっと」
「貴殿の分かる範囲でいい。では、色良い返事を期待しているぞ」


・・・


「カーヴェさん、アルハイゼンさん、こんにちは」
「あれ、どうしたんだい」
「学校の帰りか」
「うん。ねえ、二人は最近の事件はどう思う?」
 俺は、何かがおかしいと思うんだ。


・・・


 夕暮れ。灰原はパソコンの前で、深いため息を吐いた。
「哀くんどうしたんじゃ」
「なんだか、頭が痛くて」
「痛み止めをとってくるわい」
「ありがとう。にしても、もう夕方なのね……」
 帰ってからまだそんなに経っていないのにと、灰原は資料をまとめながらゲンナリとしていた。なお、阿笠もまた、新作のために睡眠を削っている。双方共に、時間が足りなかった。


・・・


 カーヴェは港に来ていた。今日は休日と決めていて、海を見ようと思ったのだ。
 しかし、家を出たのは昼頃。あれこれ寄り道をして、今はとっくに夕方になっていた。
「ねえ、アンタ」
「え、僕かい?」
 振り返ると、遠くに、銃口。


・・・


 タンッタンッ。
「はっ、はあ、はっ」
 カーヴェはがむしゃらに走る。神の目があっても、カーヴェはそう体が丈夫ではない。
 その時に、名前を呼ぶ声がした。
「カーヴェさんっ」
「はあ?! た、たるたりやくん?!」
「担ぐよ、舌噛まないでね!」
「っうん!」
 タルタリヤに抱えられて、カーヴェは倉庫街を駆け回る。メラックを抱えて、指示を飛ばした。

 タルタリヤに向かって、カーヴェは言った。
「ねえっあいつらって、」
「黒の組織かなっ! カーヴェさんはたまたま巻き込まれてる。あいつらの本命は俺ね!」
「何したんだい?!」
「あははっ! 執行官なものでね!」
 ファデュイの執行官。本当にそうなのか。カーヴェは目を丸くする。タルタリヤは、あんまり話す余裕はないよと笑っていた。


・・・


「「来たよ」」
「オイラも来たぞおー!」
「俺も来たが」
 カーヴェはパッと顔を明るくした。
「た、旅人たちにパイモンにアルハイゼン! よかった、来てくれたんだな!」
「ナイス相棒!」
「相棒?!」
 相棒ってなに?!
 カーヴェの戸惑いに、旅人たちはそれは横に置いてねと苦笑していた。


・・・


 キィンと旅人たちが銃弾を弾いた。アルハイゼンとタルタリヤが走る。カーヴェは後方支援だ。
 飛び跳ね、元素爆発すら行う。元素を使って立ち回る。派手な光も、爆発音も、倉庫街だから気にしないでほしいなとカーヴェは思う。
 ふと、顔を上げる。カーヴェの視界に愛の種"だったもの"が横切った。それを掴む手も。
「っあ、」
 これはもう、無理だ。


・・・


 旅人たちが愛の種の枯れ花を切り裂くと、黒の組織は撤退した。
「ふう、撤退しよっか」
「愛の種は最終的に黒の組織が持って、それが暴走した感じかな」
 旅人たちの言葉に、アルハイゼンも頷く。
「もう愛の種は花となり、枯れたな」
「なあなあ回収できなかったけどいいのか?」
 パイモンの不安に、カーヴェは答えた。
「仕方ないよ。花が咲いてはもう難しい。はあ、困ったな」
 種なのだから、花だって咲くこともある。しかし盲点だった。花はより厄介な性質を持っていることだろう。
「ファデュイの方でも今回の愛の種の花の影響を調べるよ」
「こちら(FBI)からもだ」
「旅人側からも調べるぞ!」
「助かるよ」
 なにがなんだか。カーヴェは考えることが増えたなと頭を抱えた。


・・・


「でこのボロボロの倉庫街をどうするんだい?」
「「助けてナヒーダ、鍾離先生!」」
「きたわよ」
「うむ」


・・・


 早朝。カーヴェは玄関扉を開く。そこには笑顔の安室がいた。
「カーヴェさん、おはようございます」
「わあ、おはよう。ここ僕の家なんだけど」
「昨日のことでお話が」
「何のことだか」
「直接見たわけではないのですが」
「へえー」
「ファデュイと共にいた、と」
「ファデュイ……」
「あの若い彼です」
「ああ、彼? 彼はそういうのではなくて、友人みたいな」
「友人?」
 安室はきょとんとする。カーヴェはそうだよと頷く。
「悪い人だけどいい人だよ」
「ええと?」
 それはダメなのでは。安室のやや不安そうな顔に、カーヴェは大丈夫さと笑って見せた。


・・・


「カーヴェさん、連続殺人事件が収まったらしいね」
 コナンがじとりとカーヴェを見ている。カーヴェは素知らぬ風だ。
「へえ、そうなんだね」
「何か知ってる?」
「まさか!」
「ふうん?」
 それよりも、とカーヴェはぷんぷんと怒って言う。
「それよりも、また灰原さんと阿笠さんに無茶言ったね?」
「うえ、えへへ、なんのことかなー?」



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