タイトル:種子の秋
ジャンル:クロスオーバー/名探偵コナン/原神
要素:ミステリー風味の何か、不可思議、元素はある

※サクサク進めるためにほぼ会話文です。
※今回はオマケ無しです。

カーヴェ…建築デザイナー。休暇として一年前から日本に来ている。
メラック…万能スマホ。元素で動いてる。

江戸川コナン…小学生。名探偵。不可思議(元素も魔力も)を無効化する。

アルハイゼン…FBIの非戦闘員。カーヴェは人間。探偵ではないが……?

毛利蘭…高校生
鈴木園子…高校生
世良真純…高校生。探偵。

鍾離…???
???…公子タルタリヤ。

七神…ナヒーダはFBIと共にいる。ウェンティはドイツ在住。他は現在不明。どっかにいる。

魔女界…まじ快要素。カーヴェ母はイギリス魔女。

愛の種…カーヴェの性質と魔女の血と元素が噛み合ってしまった故の幻覚、幻想、催眠。探偵、神の目持ち、魔女には効きが悪い。名探偵には一切効かない。犯罪者、心の不安定な者の深層心理に巣食った光であり、闇。寵愛の呪い。庇護の呪い。それらの牙は全て、カーヴェへと向き、蝕み、しかし巡り巡ってカーヴェの益となる。なお、カーヴェに愛の種の意図は一切ないので認識に齟齬がある。


・・・


 早秋である。
「涼しくなってきたので紅葉を見に行きませんか? まだこの辺りだと早いけど、少し離れたところに良いスポットがあるんです!」
 園子とカーヴェは阿笠邸前で立ち話をしていた。そんな時の園子からの提案に、カーヴェは微笑む。
「それはいいね」
「やった!」
「それには誰を呼ぶんだい?」
 疑問に、そうだなあと園子は考える。
「ええと、蘭とか、世良ちゃんとか」
「コナンくんもいいかな」
「ぜひ!」
 園子は嬉しそうに笑った。

「ところで、蘭から聞いたんですけど、アルハイゼンさんって誰ですか?」
「ルームメイトだよ」


・・・


 風から、秋の匂いがする。電車の待ち時間に、コナンは大人しく、カーヴェを見上げた。
「アルハイゼンさんはいいの?」
「今回はやめておくってさ」
「泊まりがけなのに?」
「コナンくんはアルハイゼンを僕の保護者か何かだと思ってるのかな?」
 僕は三十路のおじさんだぞ。カーヴェの主張に、コナンは、この人は三十路には見えないんだよなあと、遠い目をした。

 かくして、山の中。コナン、蘭、園子、世良、カーヴェは旅館に来ていた。美しい設えに、カーヴェが楽しそうにしている。だが、今回のカーヴェは子供達の保護者だ。代表として振る舞う。
「荷物を置いたら早速、散策に行こうか」
「賛成!」
「賛成かな」
「楽しみだね、コナン君」
「うん!」
 子供達のいい返事に、カーヴェは微笑ましそうに笑った。


・・・


 旅館を出て、少し歩いたところに遊歩道がある。まばらな観光客を横目に、鮮やかな紅葉を愛でていると、カーヴェがあれと口にした。
 コナンが視線の先を見ると、美しい男性が立っていた。たったかとカーヴェが駆け寄る。
「鍾離さんですか?」
「うむ? ああ、カーヴェ殿か。久しぶりだな」
「お久しぶりです」
 二人は近づいて何やら話している。高校生組は不思議そうにしていた。
「……話が尽きないな。宿はどこの予定だ?」
「近くの、あそこです」
「そうか。では、夕方に訪ねよう。では、紅葉狩りを楽しんでくるといい」
「はい。鍾離さんも散策を楽しんでくださいね」
 そうして、カーヴェが戻ってくると、五人で紅葉狩りを再開した。


・・・


 写真を撮ったり、談笑したり、お茶を飲んだり。一日楽しんだ一行は旅館に戻った。部屋割りは女性と男性で分かれている。
 夕飯を食べ、風呂も入った後。カーヴェは談話室に向かった。
 そこには美しい男性がいる。
「鍾離さん」
「ああ、カーヴェ殿。会えて良かった」
 ふふと笑う鍾離に、カーヴェは約束しましたからと応えた。


・・・


 談話室の鍾離とカーヴェを遠目に見るのは、コナンと世良だ。じとりと二人は彼らを見る。
 和やかな雰囲気だが、名探偵と探偵には鍾離が只者ではない気配がするのだ。端的に言って、怪しい。
「カーヴェさん、大丈夫かな」
「分かんないけど、詐欺とかではなさそうだね」
 世良とコナンはため息をついたのだった。


・・・


「それではカーヴェ殿、頼まれてくれるか」
「はい、もちろん。愛の種については、僕も回収したいですし……」
「それは良かった。これ以上、彼が苦しむところも見たくないからな」
「相変わらず、仲良しですね」
「友人だからな」
「それは良かったです」


・・・


 翌朝。朝食を終えて、旅館から出ると、目の前に車が止まった。
「やあ、カーヴェさん」
「久しぶりだね、ええと」
「タルタリヤでいいよ」
 ところでとタルタリヤは笑った。
「きみたち、カーヴェさんを借りるね」
「え?」
「ちょ、借りるって?!」
 そうしてタルタリヤにカーヴェが攫われた。

「え、なにこれ、人攫い?!」
「どうしよう?!」
 園子と蘭が慌てる中、メールが届く。カーヴェからで、心配は要らないから帰っていいよとのことだった。保護者がそれではダメだろう。というか、保護者が攫われてどうする。
 コナンと世良は、蘭と園子は帰るように言って、走った。


・・・


 カーヴェは止まった車の中で、タルタリヤと向き合う。うーんと彼の胸に手を当てた。
「確かに、愛の種があるね」
「うん。取れる?」
「分からない。結構根深そうだよ。しばらく近くにいれば絡まった根が解けてくるかも」
「そっか。じゃあしばらく一緒にいてくれる?」
「もちろん。でも、わざわざこんなところで会わなくても、米花町で良かったんじゃ、」
「カメラがあるでしょ」
「確かに」
 それに、とタルタリヤは付け加えた。
「アルハイゼンさんが怖いし」
「何となくわかるよ」
 ははと、二人はから笑いをした。


・・・


「コナン君、カーヴェさんの居場所はわかる?」
「発信機は壊されたかな」
「可能性の高そうな場所は、」
「駐車場か、ホテル」
「じゃあ、地図を見てみようか」
 そこへ、ふと、男性が現れた。
「そこの探偵たち、カーヴェ殿を探しているのだろう?」
「貴方は……」
「俺は鍾離だ。カーヴェ殿に、依頼したものだな」
「依頼?」
 世良の疑問に、そうだぞと鍾離は笑む。
「友人を助けて欲しいと、な」
「だったらボクたちが居てもいいよね!」
「そうだな。だが、事態は少し特殊だ。故に、探偵たちには待っていてもらいたいのだ」
「待つって、何を?」
「救出を」
 鍾離は、少し茶でも飲むかと近くの喫茶店を指差した。


・・・


 ぎし、と車がやや揺れた。カーヴェはタルタリヤの胸元に手を当てて、むむと唸っている。
「そろそろ取れそう……」
「ほんと、厄介だね」
「ごめんね」
「謝らないで。仕方のないことだし」
「でも、」
「カーヴェさん、悲しいの?」
「悲しいのもあるけど、申し訳ないよ」
「あなたのせいじゃないのに」
「僕の存在そのものが、呪いだよ」
「それでも、この呪いは自動的なものさ」
「ありがとう、タルタリヤくん」
「うん。どういたしまして」
 ふわ、と胸元が光る。あ、と二人が小声を上げた。
 きらきらと胸元から、愛の種が出てくる。カーヴェはそれを回収した。

 タルタリヤは安堵の息をこぼす。カーヴェもまた、安心した。
「これで良さそうだよ」
「ありがとう、カーヴェさん」
「こちらこそ。他に不調はないかい?」
「まだ少しカーヴェさんを離したくないぐらいかな」
「後遺症かな?」
「そうかも」
 なんだかカーヴェさんが眩しくてたまらないよ。タルタリヤは苦笑する。カーヴェは、厄介な呪いだねと返した。


・・・


「そろそろか」
 コナンと世良に、鍾離は言った。
「ここから見える、白い建物の駐車場に居るぞ。迎えに行くといい」
「信じてもいいの?」
「それこそ、探偵の勘に従えば良いぞ。俺はもう行く。米花町で会ったらまた話そう」
 鍾離は喫茶店から出て行く。会計は彼がカードで済ませた。世良とコナンは言いたいことを一旦飲み込んで、走った。

 駐車場。見覚えのある車からカーヴェが出てきた。すぐに車はどこかへと走り去る。
「「カーヴェさん!」」
「あれ、世良さんとコナンくん?」
「蘭ねーちゃんと園子ねーちゃんは帰ったよ!」
「説得したんだ。ねえカーヴェさん、怪我はない?」
「特にないよ」
 ひらひらとカーヴェが手を振るので、コナンはジト目で怪我がないか確認する。世良は蘭たちに報告だ。

 そうして帰路につく。
「ところで鍾離さんとタルタリヤさんって何者?」
 コナンの質問に、カーヴェはくすりと笑う。
「さあ? でも、きっと、僕らの味方だよ」
 嘘だあ。コナンと世良はげっそりとした。


・・・


 カーヴェ邸。
「アルハイゼン、ただいま」
「おかえり。また厄介なことをしているな」
「仕方ないだろ。愛の種の回収のためだ」
「公子タルタリヤから、メラックの方にメールがきていた。きみは危機感を持て」
「タルタリヤくんはいい子だよ」
「一筋縄ではいかない。ファデュイの執行官だろう」
「というかこの世界でファデュイって何してるの?」
「……黒の、」
「あー、なに、裏世界?」
「そうだな」
「メラックでメッセージのやり取りは知ってたけど、本気かあ」
「またファデュイの執行官と会うことになりそうだ」
「嫌そうだな」
「面倒だからな」
 それに、とアルハイゼンは付け加えた。
「きみはファデュイにまで情けをかけるつもりか」
「そんなつもりはない! ただ、愛の種は僕由来だからね」
「あまり下手を打つな」
「大丈夫さ」
 どうだか。アルハイゼンは深く息を吐いたのだった。



- ナノ -