タイトル:探偵の暇
ジャンル:クロスオーバー/名探偵コナン/原神
要素:事件が起きない、不可思議、元素はある

※サクサク進めるためにほぼ会話文です。

カーヴェ…建築デザイナー。休暇として一年前から日本に来ている。
メラック…万能スマホ。元素で動いてる。

江戸川コナン…小学生。名探偵。不可思議(元素も魔力も)を無効化する。
沖矢昴…大学生。FBI。赤井秀一。カーヴェはFBIのもの。
安室透…探偵。喫茶ポアロのアルバイト店員。公安。バーボン。降谷零。カーヴェは日本人。

毛利蘭…高校生

灰原哀…小学生

コレイ…カーヴェの家にホームステイ中。

アルハイゼン…FBIの非戦闘員。カーヴェは人間。
ナヒーダ…???

旅人…双子揃っている。パイモンもいる。元素案件担当。七神の居場所を把握している。

七神…ナヒーダはFBIと共にいる。彼女以外は現在不明。どっかにいる。

魔女界…まじ快要素。カーヴェ母はイギリス魔女。

愛の種…カーヴェの性質と魔女の血と元素が噛み合ってしまった故の幻覚、幻想、催眠。探偵、神の目持ち、魔女には効きが悪い。名探偵には一切効かない。犯罪者、心の不安定な者の深層心理に巣食った光であり、闇。寵愛の呪い。庇護の呪い。それらの牙は全て、カーヴェへと向き、蝕み、しかし巡り巡ってカーヴェの益となる。なお、カーヴェに愛の種の意図は一切ないので認識に齟齬がある。


・・・


 たたたたっ
「カーヴェさんっおはよう!」
「おはよう、コレイちゃん。朝食は出来てるよ」
「ありがとう! わあ、おいしそう」
「日本の一般的な朝食だよ。あとお弁当ね」
「おべんとう」
「そう。お昼ご飯に食べておくれ」
「わああ! ありがとう!」
 ではない。
「ちがう!! あたしがカーヴェさんのお手伝いにきたんだぞ?!」
「コレイちゃん、ちゃんと食べて学校行きなよ。初めての登校だろう? 早めに行かないと」
「わー! いただきます!」
「めしあがれ」


・・・


 トントン。
「おはようメラック、今朝の情報を出して」
 メラックが画面をザーッと流す。カーヴェはきちんと見て、消去した。
 コレイは登校した。カーヴェはこれから沖矢に会いに行く。
 さてはて、何を言われるか。コレイはおそらく元素関係のツテ、つまりはティナリとの友人関係でカーヴェに預けられたのだ。FBIの、元素を持たない人にとって、それはどう見えているのか。確かめたかった。

 コーヒー飴を手土産に工藤邸に向かう。掃除をしたい。てってこと進むと、玄関から入った。
「沖矢さん?」
「カーヴェ君、おはよう」
「おはようございます。眠そうですね」
「少しな」
「体調管理はしてください。これはコーヒー飴です。コナン君が、沖矢さんも喜んでたと言っていたので」
「助かる。これはうまいな」
「良かった。僕は掃除するので、と、変声器に問題は?」
「無い」
「はい。じゃあ、」
「カーヴェ君」
「はい?」
「少女の扱いに慣れているのかな?」
「……とても言い回しに棘がありますね」
「うち(FBI)の娘を預かったとあれば調べるだろう。何もなかったが」
「そんなことで寝不足なんですか?! ただホームステイを頼まれただけです!」
「誰だ?」
「植物学者のティナリですけど」
「……ああ、うん?」
「大学が同じなので友人なんです」
「そんな一般的な繋がりで?」
「それ以外無いでしょう?」
「確かに記録で、目についたが、はあ……」
「昼寝は短時間をおすすめします」
「そうする」
 ぽやぽやした沖矢にカーヴェは大変心配になった。それでいいのか。あと、カーヴェがコレイを預かったことはそれなりにニュースらしい。困った。


・・・


 夕方。コナンは大変驚いていた。
「おねーさん、誰?」
「え、誰だ?」
 カーヴェ宅でカーヴェとあれこれ話していたら、少女が帰宅したのだ。

「コナン君、こちらはコレイちゃん。アメリカの学生でホームステイに来てるよ」
「こ、こんにちは! ええと、こんばんは?」
「こんにちは! ボクは江戸川コナンだよ!」
「ホームステイ期間は三ヶ月だよ」
「ごく一般的だね?」
「そうだとも」
「ええと、コナン君はなんでカーヴェさんの家にいるんだ?」
「友達だよ」
「お兄ちゃんって呼んでるよ」
「嘘を言わなくていいから」
「ともだち?」
「「そうだね」」
「うおあ、なかよしだな」
「コレイちゃんは着替えて課題をしておいで」
「はいっ!」

 コレイが奥に消えると、コナンはジト目でカーヴェを見た。
「ボク、聞いてないよ、カーヴェさん」
「いや言うまでもないだろ」
「空港に迎えに行った子?」
「そうだよ」
「カーヴェさんの元にホームステイできる人は限られてる気がするけど」
「そうかな?」
「アメリカ? それとも日本?」
「アメリカが候補になるのは分かるけど、日本はおかしいだろう」
「アメリカかあ。沖矢さんに聞こ」
「今日は寝させてあげてくれ」
「なんで?」
「寝不足らしいよ」
「なんで?」
「コレイちゃんと僕の関連を調べてたんだって」
「何か出たの?」
「それ僕に聞くかい? 何も出てこなかったとか」
「え、じゃあなんで?」
「普通にアメリカにいる知り合いの、養子がコレイちゃんなんだよ」
「養子?」
「うん。アメリカではよくあるよ」
「あるかなあ」
「で、知り合いから頼まれたから、引き受けただけ」
「ううーん。俺も蘭もカーヴェさんとお泊まりしたことねえのに」
「素が出てる。猫を被りなさい」
「だってー!!」
「わがまま言わないでおくれ」
「というかカーヴェさんに預けるのもどうかしてるよな」
「どう言う意味かな新一」
「すぐ倒れるし、厄介事に首突っ込むし、」
「何も言い返せないな」
「ただし、家事全般が得意」
「仕事は?」
「できるじゃん……ワーカホリック……」
「褒めてくれてありがとう」
「言ってねえ」
「とにかく、コレイちゃんについては沖矢さんに聞いてくれ。確定情報は向こうだ。僕は彼女の一般的な情報しか知らない」
「わあかったよ」
「よろしい」

「カーヴェさん、あの、おしゃべり中にごめんなさい。えっと、課題でわからないところがあるんだけど」
「聞くよ。日本語で分からないところがあったのかな?」
「そう……コナン君は宿題とかいいのか?」
「終わらせたよ!」
「はやいな?!」
「コナン君は授業が終わるのが早いし、宿題も少ないからね」
「はえ、そうなんだな」
「おねーさんがわからないのはどこ?」
「えっと、この問題。読めるか?」
「読めるよ、ボクが伝えようか?」
「えっ」
「英語も話せるよ」
「えっ、えっ?」
「コナン君の気が向いたなら助けてもらいな」
「ええっ?!」
「コレイおねーさんいくよー」
「お、おう!」


・・・


 かくして、夜。コナンは帰り、コレイが部屋に就寝に消えた頃。カーヴェはメールの整理をしていた。
 メラックがしゅんっと起動する。
「メラック、どうかしたかい?」
 玄関先。人の反応がある。

 こんな時間に訪ねてくるなんて珍しい。カーヴェはたったかと向かった。

「こんばんは、カーヴェさん」
「安室さん、こんばんは。どうしたんだい? というか家を何で知ってるのか聞いても?」
「ええと、秘密です」
「そうしておいてあげよう。要件を聞こうか」
「怒ってます?」
「ほどほどには。男性であってもこんな時間に出歩くものじゃないよ」
「わあ、ご心配をおかけします。えっと、これ」
「お菓子かな?」
「はい。作りすぎたので。食べてくれる人もいないですし」
「梓さん辺りに押し付けた余り?」
「あはは」
「ああもう、返礼は何がいいのかな?」
「ええと、特には何も」
「嘘を言わなくていいよ。コレイちゃんかい?」
「大変気に食わないですねえ」
「ちょっと素が出てないかな? 猫をかぶって」
「カーヴェさんはどこまでご存知ですか?」
「なにも教えられてないよ」
「はあ」
「あえて言うなら、彼女の保護者がとてもいい人でね。助けになれるなら是非と、受けただけかな」
「彼が」
「調べたかい?」
「いやあ」
「ティナリだよ。同じ大学出身で、仕事でもお世話になってるんだ。モチーフに植物をよく使うから」
「そうですか」
「まあ、探偵なら調べはつくさ。この程度ならお菓子は受け取らないよ」
「いや受け取ってください」
「うーん、押しが強い」
「あとカーヴェさんもこんな時間に外に出てきちゃダメですよ」
「僕の家なんだが」

 カーヴェは家に入ってすぐにお菓子の箱をメラックに調べてもらったが、発信機などの機械類も薬品も特になかった。中身を確認したらシュークリームであった。
「コレイちゃんに合わせたのかな」
 確かにカーヴェはクリームが好きだが、アラサーの男に手作りシュークリームを贈るのは不自然である。カーヴェは首を傾げながら冷蔵庫に箱を仕舞った。夜にこんなものを食べたら胃もたれする。


・・・


「カーヴェさん、女の子を預かってるんですって?」
「何で灰原さんまで気にするんだい?」
「気になるわよ。カーヴェさんには江戸川君が言ってくる資料集めを手伝ってもらってるもの」
「秘密は守るよ」
「ぜひね」
「で、コレイちゃんのことかな?」
「彼女は何者かしら」
「嫌な感じがしたかい?」
「いいえ何も。むしろ、何も無いわ」
「あー、何も無いから不安なのかい?」
「ええ。カーヴェさんは決して一般人ではないし」
「一般人だけど?」
「世界的建築デザイナーは一般人にはなれないと思うわよ」
「僕は特に有名になりたかったわけじゃないんだけど、そうなってしまったね」
「そう。だから、普通の女の子はカーヴェさんのところにホームステイはしないわ」
「そこまで言うかい?」
「あと時々買い物に一緒に行ってるのを見かけるのだけど」
「なんで見られてるんだい?」
「仲良しすぎるのよ。兄妹みたい」
「僕とコレイちゃんは家族ではないよ、灰原さん」
「知ってるから困るのよ。一般人みたい生活してるのが不自然なの」
「困るな。ただコレイちゃんと日本の生活をしてるだけなんだが」
「はああ」
「悩みの種を増やしてごめんね」
「いいわよ別に……」


・・・


「カーヴェさん、ここは?」
「喫茶ポアロだよ」
「あの、このお姉さんは?」
「毛利蘭さん。友達だよ」
「すごくあの、えっと、見られてる」
「あ、ごめんなさい。カーヴェさんが女の子預かるなんて、びっくりしたの。私たちもお泊まりしたことないのに」
「新一と同じことを言うね」
「あ、新一も言ってましたか?」
「うん」
「カーヴェさん……」
「コレイちゃん、どうかした?」
「いや、もう少しまわりをたよってもいいんだぞ」
「頼ってばかりだけど」
「ええ?」
「コレイちゃんから見てカーヴェさんはどんな人?」
「ワーカホリックだぞ」
「分かるわ」
「あなた達なあ」
「パンケーキどうぞ!!」
「あ、お久しぶりです、梓さん」
「カーヴェさんお久しぶりです。そちらのお客様は見かけないお顔ですね、こんにちは」
「こっこんにちは!」


・・・


 コレイのやることは多くあるが、基本は毎日の報告である。
「人が多いぞ……」
 ウンウン唸りながら、コレイはせっせとメールを打った。


・・・


「アルハイゼン、なんでここまで皆が言うんだ」
『君の交友関係を見直す時だな』
「君も人付き合いぐらいはしろ」
『で、何か?』
「君が頼んできた論文にいくつか書き込んでおいたから、データを送るよ」
『そうか』
「あと、誰かこっちに来てるだろ。明らかに皆の様子がおかしいんだよ!」
『ふむ。FBIからではない』
「じゃあ何?」
『コレイを訪ねたいと言っていた』
「誰?」
『害はない』
「だから誰だよ! あ、こら! 切るな!!」


・・・


「こんちには! アンバーです!」
「ええっと、旅人、説明」
「こちらはアンバー、コレイと友達」
「ドイツで学生しながらバイトしてるよ」
「あとガイアだぞ!!」
「よろしくな」
「ごめん、理解できない」


・・・


「アンバー!?」
「久しぶりだねコレイーっ!」

「仲良しだなあ」
「いや、ガイアはどうしたんだ」
「うん? 前回はよく一緒に旅しただろう?」
「めちゃくちゃメタいな」
「はは、旦那たちが様子を見てこいと」
「ええ?」
「で、何かあったか?」
「何も無い。平和。仕事は順調」
「いい事だな」
「何も無いから探偵たちが暇してるよ」
「それは困るな」
「だろう? あまりここに長居しない方がいいんじゃないかな」
「それは承知の上だ」
「ガイアこそ何か疲れてそうだけど」
「前回ほど自由にはさせてもらっていないからなあ」
「いや過去は語らないでくれ。長い」
「俺もそう思う。頼むから旦那に一言、」
「家族は大事にしておいた方がいい」
「カーヴェも旦那側か」
「いや、知らないが。何も知らないなりに言うが、話し合ったら拗れるだろう」
「まあそうだな」
「だから、頑張れ」
「俺はもう少し単独で動きたい」
「無茶を言わないでくれ」
「はあ」

「アンバーは何しに来たんだ?」
「人生相談のおつきあいかな」
「うん?」


・・・


「誰??」
「コナン君、ごめん、今日、人が多くて」
「おや彼がコナン君か」
「わあ、小学生だ!」
「えっとお、」
「僕の知り合いと、コレイちゃんの知り合いだよ」
「名前は? ボクは江戸川コナン!」
「ガイアだぞ」
「アンバーだよ!」
「わあ、普通に答えられちゃった」
「カーヴェさん! 仕事の連絡来てるぞ!」
「今行くよ。コナン君は帰った方がいいかもしれないな」
「そうする。ばいばーい」


・・・


「そろそろ帰るか」
「うん、またね、コレイ、カーヴェさん!」
「またな!」
「うん、またいつでもおいで」
「帰り際だから言うが、この家の中は監視がないな」
「それはそうだろ」
「外はアルハイゼンさん(FBI)?」
「そこにコナン君と安室さんが加わってる」
「うわあ」
「コナン君と安室さんとやらの機器は片付けておこう」
「いや、やめておいてくれ。家の中は見られてないからいいよ」
「許容していいとは思えんが」
「ある程度を許容しないと、文句言ってくるからな、探偵たちは」
「うーむ」
「カーヴェさん、これほぼストーカーじゃない? ね、コレイ」
「まあ、うん」
「そんなにかあ。僕、今生は探偵って人たちとよく一緒にいたから、基準がよく分からなくなっててね」
「カーヴェはもう少し自由にさせてもらった方がいいぞ」
「日本(他国)で休暇できるだけマシだと思う」
「それはカーヴェさんが日本育ちだから許されたんじゃないかな?」
「そうかな?」
「許しとか許されないとかそういうのがもうやばいぞ……」
「あ、そこから? 有名税もあるかなって」
「カーヴェ、旦那もしくはジンがいつでも引き受けるらしいぞ」
「仕事の依頼はいつでもどうぞ」
「営業スマイルだ!」
「カーヴェさん、そこで断っちゃだめだぞ!」
「いやだって、その後を考えると頭が痛いから」
「難儀だなあ」


・・・


「帰ったね」
「そうだな」
「夕飯にするよ。オムライスはどうだい?」
「わ、おむらいす!」

「そもそもなんで盗聴器とか盗撮とか監視とか家の外はわりと許してるんだ?」
「うーん。僕がメラックの開発者とは知ってるよね?」
「う、うん」
「一応、僕も技術者になるから」
「へ?」
「妨害ぐらいはしてるから正常なデータは取れてないよ」
「う、うわあ、タチが悪いぞ」
「まあ探偵たちも分かっててやってるから。いや、安室さんはちょっと分かってないな」
「ええ?」
「コナン君は僕が機械に強いなあぐらいは知ってるよ。知った上で懲りない」
「こ、こりない」
「アルハイゼンは上の指示でやってるだけだから、知った上でしれっと報告を操作してるさ。あとアイツはここに住む時に全部壊すと思う」
「う、うわあ」
「僕は僕で何とかしろとかどうとか言って、自分が監視されるのは嫌だろうアイツは」
「監視されるのは誰でもいやだぞ?!」
「うーん?」
「ききかん!」
「むしろ守られてるよね」
「前向きなんだか後ろ向きなんだかわからないぞ?!」
「だから安心してね」
「なにが?!」


・・・


「こんばんは」
「やっぱり来たね」
「あはは、こちらは手土産です」
「受け取らないよ」
「まあまあまあ」
「押しが強い」
「クリームがお好きですよね? ロールケーキです」
「よく知ってるね。うーん多いな」
「コレイさんと食べてください」
「年頃の女の子にあまり食べさせられないよ」
「手厳しい」
「普通だと思うな」
「カーヴェさんはいつまで日本に?」
「さあ。色々終わるまでは日本だね」
「それはいつですか?」
「秘密だよ」
「あなたはいつも秘密主義ですね」
「そんな訳はないよ」
「あの、」

「っカーヴェさん!!」
「あ、コレイちゃん来なくていいよ」
「その人は?!」
「安室さん」
「なんでこんな時間に家にきてるんだ?!」
「さあ?」
「こんばんは」
「ふ、ふしんしゃ!!」
「コレイさんに言われたくないなあ」
「ひえ」
「こら、安室さん。女の子をいじめたらいけないよ」
「カーヴェさんは嫌じゃないんですか」
「別に。コレイちゃんは下がってて」
「カーヴェさんも家に入るんだぞ!」
「カーヴェさん、その子は」
「二人とも、深夜の住宅街で騒がないの」
「「……」」
「安室さん、またね」
「あ、はい」

「コレイちゃん、来ちゃダメだろう?」
「カーヴェさん、あの人、怖いぞ」
「まあ、あの人も悪い人じゃないから」
「どこがだ?!」
「女の子相手に大人気ないなとは思うよ」
「そこじゃないぞ?!」
「コレイちゃん怖かったね」
「うう、」
「あの人が怖い雰囲気してたら逃げるんだよ」
「わかった」


・・・


 朝である。家の防犯を念のため見直してから寝たが、カーヴェは早くに起きて、コレイのために朝食や弁当を作っていた。
「おはよう、カーヴェさん!」
「おはよう、コレイちゃん。よく眠れたかい?」
「うう、あんまり」
「あまり気にせず過ごしてね」
「むりだぞ……」
「ティナリはその辺り、厳しいからなあ」
「カーヴェさんがゆるゆるなんだぞ」
「そうかな?」
「ゆるゆるに見せかけて全然ゆるゆるじゃないからタチが悪い……」
「よく言われる。アルハイゼンと暮らしていける度胸はあるつもりだよ」
「アルハイゼンさんが苦労しそうだぞ」
「アイツが苦労するわけないよ。さっさと自分のことをやるだけだ」
「ううーん?」
「ほら、ご飯食べてね」
「はあい」


・・・


「アルハイゼン。こちらは朝。連絡だ」
『何だうるさい』
「苛立ってるんだよこっちは!」
『うるさい切るぞ』
「待て、とりあえず全記録をメラックと書き換えたから」
『また派手にやったな』
「うるさい」
『何かあったか?』
「とぼけるな。ゼロが訪ねてくる」
『あれは知らん』
「探偵」
『あの深夜帯ならおそらくバーボンの仕事の後に来ている』
「だからあんなに危なっかしいのか!」
『君はどこまで把握している?』
「メラックをなめるな」
『マスター権限か』
「黒の組織はそもそも新一関連で調べてる」
『タチが悪いな』
「君には言われたくない。僕はうんざりしている」
『知ってる。俺が行くまでは耐えろ』
「君が解決できる問題じゃない」
『少なくともゼロとは話し合う必要がある』
「赤井さんは?」
『そちらも挨拶が必要だな』
「コナン君」
『名探偵は無理だ』
「蘭さん」
『彼女と名探偵に囲われるのはやめた方がいい』
「ああもう」
『大半が君の蒔いた種だ』
「皆してやりすぎなんだ! そもそもどこから間違えたんだ僕は!」
『ところかまわず猫を被るのをやめたらどうだ?』
「君とは違って社交性を持ち合わせてるんだよ!」
『俺でストレス発散はやめろ』
「クソっ最悪だ」
『反省したか?』
「全く」
『だろうな』
「過去に間違えた点は山ほどあるが」
『相変わらずだな』
「だからといって今更どうしろって言うんだ!」
『嫌なことは嫌と言え』
「それは君だからできるんだぞ!」
『大体、安室も突き返せないんだろう』
「当たり前だろ! 僕が昔助けたんだぞ?!」
『責任を感じることはない』
「無茶を言うな!!」
『そろそろ君は時間だろう』
「安室さんは何で深夜に訪ねてくるんだよお」
『会いたいだけだろう』
「は?」
『特に話題もなく、手土産を持参して、取り留めもない会話で帰るだろう』
「うん」
『会いたいだけだろう』
「……うん?」
『君がしてきたことを思い出せ』
「ありすぎて分からない」
『そういうところが非情だな』
「僕がダメなやつみたいだろう!」
『事実だ』
「くそう」
『喫茶店に行く習慣でもつければいい』
「適当……」
『どうでもいいからな』
「僕が人の親切をあしらえないのは知ってるだろ」
『知っている。悪癖だ』
「ぐっ」
『これを機に反省すればいい』
「無茶を言うな、あ、こら通話を切るな!!」


・・・


「あら、アルハイゼン、どうかしたのかしら?」
「知恵をお貸しください」
「まあまあ、かまわないわ、どうぞ座ってね」


・・・


「やあ! ボクだよ!」
「なんでウェンティさん?」
「お困りと聞いてねー」
「ごめん、待って、せめて荷物をまとめさせてくれ」
「大丈夫。誘拐はしないよ。落ち着いて」
「はい」
「お酒、はダメだから、お茶をしよう!」
「どこで、ですか」
「喫茶ポアロかなあ」
「ううーん」
「まあまあ、落ち着いて。風鳥くん」
「極楽鳥です」
「あはは! ボクだからね! さあ、行こう!」
「ちなみに話はどこから?」
「ふふん」
「ガイアとアンバーちゃんかあ」
「さあさあ!」
「わ、今、行きますから」
「早く早く!」

「いらっしゃいませ」
「どうも……」
「積もる話より前に座ろうか!」
「話は無いですってば」
「カウンター席へどうぞ」
「ボクはジュース!」
「支払いは僕がしますから、サンドイッチはどうですか?」
「いいねー」
「僕はコーヒーで」
「はい。お任せください」
「ボクは離れようか?」
「いてください」
「風鳥くん、涙目になってるよ、おーよしよし」
「風鳥じゃないです」
「お待たせしました」
「はやーい! あ、ボクはウェンティ! ドイツから来たよ!」
「日本語がお上手ですね」
「まあね!」
「カーヴェさんはどうしたんですか?」
「困ってるみたいだから連れてきたんだ」
「そうなんですかあ」
「ウェンティさん、待って、待ってくれ」
「あんまり困るようなら、ドイツに連れて行こうかなって」
「それは大変ですよお客様」
「ボクは全く困らないよ! 頼みたい仕事もあるし」
「ウェンティさん待って、あまりそんな」
「ボクは困らないからね!」
「周囲が困るんですよ?!」
「カーヴェさん、この方はどういう?」
「ドイツの、あー、えっと、」
「吟遊詩人かな!」
「それは通じないんですってば!」
「吟遊詩人?」
「さて、店員さん。風鳥くんを困らせてるでしょ。ちゃんとお喋りしなよ? 風鳥くんもね。少し演奏するね! マスターから許可はもらってるよ!」

「あー、ええと、安室さん」
「なんですか?」
「とりあえず深夜はダメだ。コレイちゃんを預かってるからね」
「どうして彼女を好きにさせているのか聞いても?」
「一応、僕は向こうの客人という扱いなんだ」
「カーヴェさんは日本人です」
「生まれと育ちはね。とにかく、向こうに情報が渡るのは苦じゃないんだ」
「そうですか」
「かと言って、僕は頼まれない限り、向こうに協力もしない。今、僕が協力するならコナン君だ」
「はい」
「向こうは焦ってるんだ。僕がコナン君ばかり見ているからね」
「自覚があるんですね」
「勿論。で、安室さんは僕が日本人としてあってほしいわけだ」
「はい」
「この国に居る間は日本人として振る舞うだろう。でも、そもそも僕は呼ばれればどこへでも行くからね。その点は根無し草でもある。ウェンティさんは僕を風鳥と呼ぶし」
「その呼び名は悪趣味では?」
「彼にとっては褒め言葉であり、愛情表現だよ」
「分からない」
「まあね、僕も詳しくはない。ここで話を戻すとして、直球に言うと、安室さんは僕に会いたいのかい?」
「語弊があります」
「深夜に訪ねてくるのが非常識だよ」
「はい」
「自覚済みなら話は早いな。普通に昼間には会いに来れないんだね?」
「え、はい」
「じゃあ僕がここに通うしかないな」
「嫌がらないんですか」
「嫌だろうと何だろうと、僕の蒔いた種に違いはない。はあ、ある程度の責任はとらないとね。もう大人だし」
「嫌ならやめてください」
「いーや、やる。僕だってあなたとは話し合う必要があるからね」
「怒ってます?」
「勿論」
「怒るんですね」
「当たり前だよ。人間だからね」
「じゃあ、僕ともっと喋ってください」
「うん」
「はい」
「あと、僕と話し合うならアルハイゼンもそのうち参加すると考えておくように」
「……どちら様ですか?」
「そのうち同居人になる予定だから。コレイちゃんとは入れ替わりになるかな」
「え?」
「アルハイゼンもあなたと話したがっていたよ」
「誰??」


・・・


「ウェンティさんはどこまで送ればいいですか?」
「迎えが来るよー」
「誰が来ます? え、ここに来ますか?」
「うん。呼んでおいたから」
「誰を?」
「ディルック」
「僕はガイアに何も言ってません」
「知ってるよ?」
「待ち合わせですか?」
「うん、おむかえー」
「来ました。帰るぞ」
「わはー、ばいばーい」
「カーヴェさんはいつでもガイアさんに会い来てください」
「あ、うん。さよなら……」
「カーヴェさん、今の、アカツキワイナリーの」
「見なかったことにしよう」
「カーヴェさん、お話しましょうか」
「僕も詳しくはない。たまたまガイアと同じパーティを組むこともあっただけ!」
「パーティ?」
「おおっとそこは僕の一存で話せない」
「じゃあ、ガイアさんとは?」
「ディルックの家族、かな」
「そんな人いましたっけ」
「ディルックが守ってるから……」
「何でですか」
「僕も詳しくはなくて、あそこ分からなくて。わからないままにガイアとよく話すから、もう」
「カーヴェさん泣いてます?」
「僕は僕の事で手一杯だから、普通に話してるだけなんだよお」
「カーヴェさんは口を開くだけで何もかも面白いことになりますね」
「なんとね、口を開かなくても勝手に話が転がっていくこともある」
「うわあ」
「無理」
「カーヴェさん落ち着いて」
「僕が何をしたって言うんだ」
「あえて言うなら、何もしてないから、話が明々後日に転がってますよ」
「なんで?!」
「そういうこともあります」
「うう、」
「泣かないでくださいね」

「なんでカーヴェさんが泣いてるの?」
「うわあコナン君ストップ。カーヴェさん、今、繊細だから」
「コナン君、僕が何をしたんだろう」
「たぶん、カーヴェさんがする事なす事、全部カーヴェさんが思ってない方向に飛んでるよ」
「うわあん」
「慣れてるね?」
「カーヴェさんは酔っ払うと大体これだよ。お酒飲ませてないよね?」
「うん」
「じゃあストレスかなあ。たまになるから、これはどうしようもないやつ」
「ええ?」
「今はコレイさんが居るでしょ? 家でも、外モードだからね、ボクは早めにコレイさんにも素を出した方がいいと思う。まあ、カーヴェさんだからプライドが高くて無理だろうけど」
「ええー」
「で、なんで、安室さんに素を少しだけでも出せたのかなー?」
「なんでだろうねー?」
「めちゃくちゃ嬉しそうだけどカーヴェさんの友人になれたぐらいだからな」
「コナン君怖い」
「僕の人生はなんでこんなに最悪なんだよお」
「カーヴェさん落ち着いてー? コーヒーあるなら飲んで? 好きでしょ?」
「うう」
「お酒はダメだよ?」
「うん」
「お酒は蘭ねーちゃんも怒るよ?」
「うん」
「なんなら蘭ねーちゃんの両親とうちの両親も乗り込んでくるよ」
「ひえ、や、やだ、こわい」
「そう。だから落ち着いてね」
「う、うん。一気に肝が冷えた」
「カーヴェさん頭いいから推測できちゃうもんね。あの人たちの性格もよく知ってるし」
「子供時代に痛感してるよ」
「あれ、もしかしてお泊まり会を断ってたのは」
「ええと、あれは二人を邪魔したくなかったのと、あとは、ご両親方の圧が申し訳なくて。ただでさえ迷惑かけてたからね」
「そっかあ。そんなことしてるから今でもあの人たちが気にかけてるんだよ」
「怖い」
「あのお、察した人たちであってます?」
「たぶんねー」
「それは大変ですね」
「どういう意味かなー?」
「ふふ、押しが強いなと」
「ふふー、ボクらからカーヴェさんを取り上げちゃだめだからね? カーヴェさんは新一兄ちゃんと蘭姉ちゃんのおにーちゃんなんだから」
「それはカーヴェさんが大変だなー」
「あははー何のことかなー?」
「探偵たちの会話って怖」
「怖がらないでくださいね」
「何にも怖くないよ!」
「新一と蘭さんの挙式で友人席の隅にいるつもりだよ」
「親族席だよ?」
「親族じゃないからね」
「新一兄ちゃんも蘭姉ちゃんも悲しむよ?」
「うわやめてくれ、その言い方はやめてくれ」
「悲しいなあ」
「良心が痛む」
「そんなことしてるから囲われそうになってるんですよ」
「はっ!!」
「チッ」
「カーヴェさん、僕も頑張りますね」
「僕のことで頑張らなくていいからな!?」
「好物はクリームは覚えてたんですけど」
「餌付けはダメだ! お菓子類にするつもりだろう? あまり食べては健康に悪い」
「ダメですか……」
「うう」
「カーヴェさん落ち着いてー」
「敵しかない」
「あ、わかりました?」
「えへへー」
「僕はもう帰るからな! また今度!」
「はい、また今度」
「ばいばーい」


・・・


「コレイちゃんおかえりなさい」
「ただいまだぞ! あ、おつかれだな?」
「うん。家事はやったから、仕事は休みを取ろうかなって」
「家事ならあたしだってやるぞ?!」
「うん、今度から少しだけ分担しようか」
「うん!」


・・・


タイトル:探偵の暇
ジャンル:クロスオーバー/名探偵コナン/原神
要素:事件が起きない、不可思議、元素はある

カーヴェ…建築デザイナー。休暇として一年前から日本に来ている。他人の目をとても気にしている。調べようと思えば大抵のことは分かる。分かった上で対応している。タチが悪いが、本人もストレスになっている。
メラック…万能スマホ。元素で動いてる。

江戸川コナン…小学生。名探偵。不可思議(元素も魔力も)を無効化する。
沖矢昴…大学生。FBI。赤井秀一。カーヴェはFBIのもの。
安室透…探偵。喫茶ポアロのアルバイト店員。公安。バーボン。降谷零。カーヴェは日本人。

毛利蘭…高校生。幼い頃から新一との仲を応援してくれているカーヴェに懐いている。

コレイ…カーヴェの家にホームステイ中。FBIの潜入員見習い。カーヴェはスメールのひと。

ガイア…ドイツのアカツキワイナリー所属。ディルックに守られている。本人は自由にやりたい。カーヴェに何も話していないが友人のつもり。
アンバー…ドイツ在住。学生でアルバイター。騎士団に入団予定。コレイとは友達。カーヴェは大変そうな人。
ウェンティ…ドイツの大切な存在。大抵の酒場にウェンティの専用席がある。見た目年齢で酒場で酒は飲めない。カーヴェは風鳥として愛でている。
ディルック…ドイツの世界的酒造アカツキワイナリーの主人。ガイアを守っている。ウェンティの保護もしてる。カーヴェはガイアの友人。

アルハイゼン…FBIの非戦闘員。カーヴェは人間。カーヴェが完全に素で通せる唯一無二。そんなカーヴェにしれっと我を通せる。
ナヒーダ…???。FBIと行動を共にしている。

旅人…双子揃っている。パイモンもいる。元素案件担当。七神の居場所を把握している。

七神…ナヒーダはFBIと共にいる。ウェンティはドイツ在住。他は現在不明。どっかにいる。

魔女界…まじ快要素。カーヴェ母はイギリス魔女。

愛の種…カーヴェの性質と魔女の血と元素が噛み合ってしまった故の幻覚、幻想、催眠。探偵、神の目持ち、魔女には効きが悪い。名探偵には一切効かない。犯罪者、心の不安定な者の深層心理に巣食った光であり、闇。寵愛の呪い。庇護の呪い。それらの牙は全て、カーヴェへと向き、蝕み、しかし巡り巡ってカーヴェの益となる。なお、カーヴェに愛の種の意図は一切ないので認識に齟齬がある。
今回は特になし。

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